精算幅とは?フリーランスエンジニアが知っておきたい精算の仕組みや注意点を解説
2024年3月1日
フリーランスエンジニアとして仕事を探している方の多くは「精算幅」という言葉を見たことがあるでしょう。「精算幅」が実際にどのような意味なのか、報酬にどのような影響があるのかはよくわからない、という方もいるはずです。フリーランスの報酬を大きく左右する仕組みのため、きちんと理解しておかなければなりません。
本記事では、精算幅の概要と仕組み、実際の事例を元にした計算方法をご紹介します。フリーランスエンジニアが注意すべき精算のポイントまで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
精算幅とは
精算幅とは、フリーランスエンジニアの業務契約においてよく利用されている精算方法の1つです。報酬単価に対して稼働時間の上限と下限を設定しているもので、「精算:140~160」といった仕方で設定されます。この例の場合、仮に月額報酬単価が50万円だったとすると、月の稼働時間が140時間から160時間の間であれば報酬として50万円が支給される、ということを意味しています。
稼働時間を下回った分はその分報酬が差し引かれ、支給される報酬は減ります。逆に稼働時間を上回った場合、その分元々の報酬に上乗せされ、支給される報酬は増えるという仕組みになっています。精算幅はフリーランスエンジニア向けの業務委託契約においてよく見られる精算方法です。概要や精算方法についてきちんと把握しておきましょう。
精算幅が設定されている理由
それでは、なぜ精算幅は設定されているのでしょうか。精算幅など設定せずに、毎月同じ報酬にすれば良いのではないか、と考える方もいるでしょう。精算幅が設定されているのは、月ごとに適切な報酬を支払うためです。
たとえば、連休がある5月や年始の休みがある1月、そもそも日数が少ない2月は、他の月に比べて営業日数が少なくなってしまいます。そのため、精算幅を設定せずに月額報酬単価を固定してしまうと、営業日数が少ない月でも営業日数が多い月と同じ額の報酬を支払わなければなりません。エンジニアにとっては逆に、稼働日数が多かった月でも稼働日数が少ない月と同じ報酬しか支払ってもらえません。
こうした不都合を避けるために、稼働日数に応じて適切額の報酬を支払うことができるような仕組みとして精算幅が活用されているのです。精算幅を設定しておけば、毎月一定額の安定した報酬が支払われます。その点ではエンジニアにとってもメリットの多い仕組みです。
精算幅の時間単価例
ここでは、実際にフリーランスエンジニア向けの案件で使われている精算幅の例をご紹介します。精算幅は基本的に、月単位で設定されます。また、案件によって一週間あたりの稼働日数が異なるため、週の稼働日数に応じて一か月あたりの精算幅の上限と下限は異なります。
1日の労働時間の標準が8時間で想定されており、1日あたりの稼働時間の幅が7~9時間と設定されていた場合、一週間あたりの稼働日数ごとの精算幅は以下のようになります。
一週間あたりの稼働日数 | 1か月あたりの稼働時間 | 精算幅 |
5日 | 7~9(時間)×20(日) | 140~180時間 |
4日 | 7~9(時間)×16(日) | 112~144時間 |
3日 | 7~9(時間)×12(日) | 84~108時間 |
2日 | 7~9(時間)×8(日) | 56~72時間 |
精算幅の超過・控除の精算方法
一か月あたりの稼働日数が精算幅の下限を下回った場合は控除され、報酬が減額されます。対して、精算幅の上限を上回った場合は加算され、報酬が増額されます。ここでは、精算幅の超過・控除の精算方法として上下割と中央割という2つの方法について解説し、具体的な計算の例をご紹介します。
上下割
上下割は、稼働時間が下限を下回った時には控除単価を下限時間を元に算出し、上限を上回った時は超過単価を上限時間を元に算出する精算方法です。たとえば、精算幅が140~180時間で基本単価が50万円の案件を想定してみましょう。
基本単価が50万円なので、稼働時間が下限を下回った場合の控除単価は以下のように求められます。
500,000÷140=3,571(円)(小数点以下切り捨て)
対して、稼働時間が上限を上回った場合の超過単価は以下のように求められます。
500,000÷180=2,777(円)(小数点以下切り捨て)
この控除単価と超過単価を元に、実際の稼働時間から報酬額が決定されます。同じ例で月の稼働時間が120時間だった場合は、控除単価を元に以下のような計算が行われます。
精算単価=(140-120)×3,571=71,420(円)
支払金額=500,000-71,420=428,580(円)
同じく、月の稼働時間が180時間だった場合は、超過単価を元に以下のような計算が行われます。
精算単価=(180-160)×2,777=55,540(円)
支払金額=500,000+55,540=555,540(円)
上下割は計算がシンプルになりますが、控除単価に比べて超過単価の方が低くなるため、エンジニアにとっては稼働時間が多い場合に損しやすいというデメリットがあります。
中央割
中央割は、精算幅の中央値を元に控除と超過それぞれの精算単価を算出する方法です。同じく、精算幅が140~180時間で基本単価が50万円の案件を想定してみましょう。
中央値は160時間になるため、中間割単価は以下のように求められます。
500,000÷160=3,125(円)
この単価を元に、控除と超過の支払い単価を計算してみます。仮に稼働時間が120時間だった場合は、以下のような計算が行われます。
精算単価=(140-120)×3,125=62,500(円)
支払金額=500,000-62,500=437,500(円)
また、仮に稼働時間が180時間だった場合は以下のような計算が行われます。
精算単価=(180-160)×3,125=62,500(円)
支払金額=500,000+62,500=562,500(円)
中央割の場合は上下割に比べてた場合にはエンジニアにとって得になりやすいのが特徴です。理由としては、超過で受け取る報酬が増え、控除で引かれる報酬が減るためです。
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精算幅がない精算方法
精算幅がない精算方法も、フリーランスエンジニア向けの案件の中にはあります。ここでは精算幅が設定されていない場合の精算方法として、固定精算と時給精算の特徴について解説します。
固定精算の場合
固定精算の場合、稼働時間に関係なく一定の報酬が支払われます。成果物を納品するタイプの業務委託契約においてよく見られる精算方法です。
固定精算であれば、作業に時間がかかるほど時間単価が下がってしまい、残業代のような追加報酬は発生しません。反対に、作業が早く終わるほど時間単価が高い精算方法でもあるため、スキルと仕事の難易度次第では効率良く報酬を得られる場合もあります。
時給精算の場合
時給精算はその名の通り、一般的なアルバイトと同じく時給によって報酬を精算する方法です。
時給精算の場合、契約形態によってはトラブルに発展する恐れがあるため注意しましょう。業務委託契約を結んでいる場合、本来はエンジニア側が業務の進め方についての指示を受けることはなく、発注者が指示を出したり、自社の服務規程等を適用したりできません。しかし、業務委託契約を結んでいるにもかかわらず、発注者側が稼働時間についての指示を出すのは違法な行為とみなされる恐れがあり、トラブルに発展する恐れがあります。
契約の際は契約形態と精算方法についてきちんと確認し、不当な命令を受けないように注意しなければなりません。
フリーランスエンジニアが注意すべき精算のポイント
フリーランスエンジニアは、発注者側と契約や報酬に関してトラブルになっても自分で解決しなければなりません。損をしてしまわないよう、精算のポイントをおさえて、契約の前に確認しておく必要があります。
ここでは、フリーランスエンジニアが注意すべき精算のポイントとして、以下の5つの点について解説します。
・作業時間単位をチェックする
・月ごとの営業日数をチェックする
・契約形態をチェックする
・精算方法をチェックする
・日割りの精算方法をチェックする
作業時間単位をチェックする
月の作業時間単位をチェックしておきましょう。作業時間単位が短いほど、仕事を受注する側は正確に報酬を請求できます。反対に、時間単位が長くなるほど余った分の稼働時間が切り捨てられてしまうため、損をすることになってしまいます。
実態としては30分単位が一般的で、1時間単位になるとあまり良い条件とは言えません。確認のうえ、不満であれば交渉することをおすすめします。
月ごとの営業日数をチェックする
案件によって営業日数は異なります。発注側のオフィスに出社しなければならない場合など、クライアント側の営業日数によって稼働日数には差が生じます。クライアント側の月ごとの営業日数をチェックしておき、控除が発生しやすい時期がないかを確認しておくことをおすすめします。
特に夏季休暇が入りやすい8月や、年末年始を挟む12月・1月、月の日数が少ない2月に注意が必要です。
契約形態をチェックする
契約形態は、契約の前に必ずチェックしておきましょう。フリーランスエンジニアが企業と結ぶ業務委託契約には、主に以下の2種類の形態があります。
・請負契約
・準委任契約
請負契約は、完成した成果物に対して報酬が支払われる契約です。稼働時間や勤務態度などは一切考慮されませんが、成果物に不備があった場合は報酬は支払われず、稼働時間が長くなっても追加の報酬が支払われることもありません。
請負契約は成果物が納品できなければ報酬が発生しないため、スキルに自信がない方にはリスクのある契約形態です。反対に、スキルに自信のある方は稼働時間を減らしても報酬が減らないため、時間単価が高くなりやすい契約形態であるとも言えます。
準委任契約は請負契約とは違い、成果物ではなく業務の遂行に対して報酬が支払われる契約形態です。業務の結果や成果物が評価される訳ではないため、フリーランスとして経験が浅くても収入を得やすい契約形態と言えます。
請負契約の場合は成果物に対して報酬が発生するため、納品までの間に契約が解除されることは基本的にありません。しかし準委任契約の場合は、成果物ではなく業務の遂行に対して報酬が支払われるため、契約解除のリスクが高い契約形態でもあります。人員整理などが必要になった場合、その企業に所属する正社員のエンジニアよりも、フリーランスがその対象となる可能性が高いのです。
精算方法をチェックする
精算方法も事前にチェックしておきましょう。精算幅が設定されている場合は上下割か中央割かをチェックし、そうでなければ固定精算か時給精算か、といった点に注意が必要です。
精算幅が設定されている場合は、合わせて以下のポイントにも注意しましょう。
・時間単位
・営業日
・所定勤務時間
・切り捨て(〇〇円以下、など)
日割りの精算方法をチェックする
日割りの精算方法も、事前にチェックしておきたいポイントです。特に月の途中から案件に参画する場合は、報酬を日割りで精算します。一般的には、実際に稼働する営業日数を全体の営業日数で割った値を元に日割り金額を決定します。精算幅も同様に、実際の稼働日数を元に計算します。
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まとめ
本記事では、フリーランスエンジニアの報酬の精算の仕組みである「精算幅」について解説しました。精算幅は、月の稼働時間に幅を設けることで、毎月安定した額の報酬を支払えるようにする仕組みのことです。発注する企業にとってはエンジニアの働いた時間に応じて正確な報酬を支払うことができ、エンジニアにとっては安定した報酬を得られる仕組みでもあります。
精算幅には上下割と中央割という精算方法があり、計算方法によって控除と超過の際の支払い額が変わります。案件によって精算方法が異なるため、事前に確認しておく必要があります。フリーランスエンジニアは、契約や報酬に関してトラブルがあっても自分の力で対応しなければなりません。事前に契約事項については詳しくチェックしておきましょう。
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