スクラムマスターとは?仕事内容や年収・なる方法も紹介!

「キャリアアップして、年収を今より上げたい!」

「このまま開発メンバーの一員でいいのか不安…」

このような悩みや不安を抱えるエンジニアの方もいることでしょう。

フリーランスエンジニアは、働きやすさや報酬の側面から注目を集めている一方で、ある程度年数を積んだ方がキャリアに行き詰まるケースも少なくないようです。

本記事では、スクラム開発における開発者の一歩先にあるキャリア「スクラムマスター」に関して、概要や仕事内容、年収、なる方法について紹介します。

この記事を参考にすることで、エンジニアとしてのキャリアパスがよりクリアになり、市場価値の高い人材になる方法を知れるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

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スクラムマスターとは

スクラムマスターとは、チームでスクラムを確立することに責任を担うポジションを指します。スクラムとは、短期間でシステム開発をする手法「アジャイル開発」の代表的なフレームワークです。スクラムを確立することで、俊敏性・柔軟性の高い開発が実現できます。

スクラムマスターは、スクラムチームと組織の中で、スクラムの理論・実践法を全員に理解してもらえるようコーチする役目を担います。プロダクトオーナーと開発者が円滑にプロジェクトを進められるようにサポートするのも、スクラムマスターの役目です。

スクラムのバイブルと呼ばれる「スクラムガイド」では、スクラムの定義や理念、手法について取りまとめられています。スクラムの導入に際して、必ずスクラムガイドに準拠することが必要です。

したがって、本記事の内容もスクラムガイドに基づいています。

参考:スクラムガイド|Ken Schwaber & Jeff Sutherland

スクラムマスターとPMとの違い

スクラムマスターとPM(プロジェクトマネージャー)は混同されることもありますが、まったくの別物です。

PMはプロジェクトの責任者として、プロジェクト全体の管理を担います。一方で、スクラムマスターは、プロジェクトの管理はおこないません。

そもそもスクラム開発において、マネージャーは存在しません。スクラムは自己管理型・自律型の組織であるため、管理者がいなくても成立することが前提になっているためです。

スクラム開発では、開発を機能ごとの小さな単位に分け、チームで要件定義からテストまでを反復させながら完成させていきます。その1サイクルを「スプリント」と呼びます。

一方で、ウォーターフォール開発では、要件定義〜運用保守までの工程ごとに、トップダウン式で開発を進めます。そのため、全体を統括するPMが必要になるのです。

スクラムマスターの仕事内容

「チームでスクラムを確立する」といっても、あまりイメージが掴めないかと思います。

スクラムマスターの代表的な仕事内容は、以下のとおりです。

  • スクラムを確立するためにチームを支援する
  • 進捗を妨げる障害物を排除する
  • スクラムイベントを開催し進捗を管理する
  • プロダクトオーナーをサポートする

それぞれの詳細について解説します。

スクラムを確立するためにチームを支援する

スクラムマスターの役割は、スクラムがスクラムガイドにのっとってきちんとチームに導入・実践されるよう、チームや組織にスクラムの理解を促すことです。

具体的には、スクラムの理論や価値、手法をチームメンバーに教え、実行できるよう支援します。

スクラムの理論、価値の詳細は以下のとおりです。

【スクラムの理論】

  • 経験に基づいて意思決定し、ムダを省き本質に集中する
  • 透明性・検査・適応を実現する

【スクラムの価値】

  • ゴールを達成しお互いにサポートする
  • スプリントの作業に集中する
  • 作業や課題を公開する
  • お互いに能⼒のある独⽴した個⼈として尊敬し合う
  • 正しいことをする勇気や困難な問題に取り組む勇気を持つ

スクラムマスターは、こうしたスクラムの行動指針をメンバーに浸透させ、スクラム開発を円滑に進行させていく役目を果たします。

進捗を妨げる障害物を排除する

各メンバーが自分のタスクに集中できるように障害を取り除くのも、スクラムマスターの役割です。

スクラムマスターの障害物とそれに対する解決策としては、以下が挙げられるでしょう。

障害物PO(プロダクトオーナー)と開発メンバーの意見が食い違っているチーム外からタスクが振られる
解決策話し合いの場を設けるPOを窓口として連絡を集中させる

スクラムでは、障害物が発生した際にスクラムマスターとチーム、POが協力し解決していくことが重要です。そのため、メンバーやPOが衝突した際に、それを取りまとめる高いコミュニケーション能力や統率力が求められるでしょう。

スクラムマスターは、開発を妨げる種々の問題が発生した際に、臨機応変に対応し、迅速に解決していく役目を果たします。

スクラムイベントを開催し進捗を管理する

スクラムイベントを開催し、スプリントの計画〜レビューまでの進捗管理を実施するのも、スクラムマスターの重要な仕事です。

スクラムイベントには、以下の4種類があります。

スプリントプランニングスプリントで実施する作業計画の立案をする
デイリースクラムスプリントゴールに向けて進捗状況を検査し、必要に応じてプリントバックログの修正をする
スプリントレビュースプリントの成果を検査し、課題・改善点を見つけ出す
スプリントレトロスペクティブスプリントの最終段階で振り返りの会議をおこなう

各種スクラムイベントを開くことで、スクラム開発を滞りなく進め、最良のプロダクトの開発に努めます。

プロダクトオーナーをサポートする

スクラムチームの責任者であるプロダクトオーナーをバックアップするのも、スクラムマスターの仕事です。

策定するプロダクトゴールやプロダクトバックログ、プロダクト計画のリファインメント(改良・改善)のため、奔走します。

プロダクトバックログとは、プロダクトの改善に必要なタスクを優先順位で並べた⼀覧のことです。

開発者も含め議論しながら、プロダクトバックログの説明・並び順・サイズなどの詳細を追加していきます。

開発におけるタスクの優先順位づけなどのサポートを通して、円滑なプロジェクト進行を促す潤滑油としての役目を果たすことも、スクラムマスターの重要な役割です。

スクラムマスターの年収

日本ではまだまだアジャイル開発が定着していないため、スクラムマスターの平均年収を算出するのは難しい面もあります。しかし、一般的に、システムエンジニアなどと比較しても高い水準にあるのは確かなようです。

スクラムマスターという職種自体が希少価値が高いために、年収も総じて高くなる傾向にあります。

求人サイト「doda」の情報を参考にすると、スクラムマスターの年収レンジとしては500万円~1500万円ほどです。スキルや経験値などによって幅はありますが、20代でも500万円、40代になると平均800万円ほどになります。1000万円以上の案件も決して少なくありません。

キャリアアップという観点から見ても、十分に魅力的な職種といえるでしょう。

参考:スクラムマスター の転職・求人検索結果|doda

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スクラムマスターに求められるスキル

スクラムマスターになるには、次のようなスキルが必要不可欠です。

  • ティーチング
  • ファシリテーティング
  • メンタリング
  • コーチング
  • シチュエーショナリング

上記は、認定スクラムマスター試験の研修で紹介される5つのスキルです。

現場においてスクラムマスターとして活躍するために重要な能力であるため、押えておきましょう。

ティーチング

スクラム開発におけるティーチングとは、開発者に知識や技術を教えるスキルです。

スクラムマスターが、メンバーに対してスクラムやプロジェクトについての理解を促します。

指導者として円滑に知識や技術を教え伝えるためには、スクラムマスター自身に豊富な知見が必要です。また、不明点を気軽に質問してもらえる雰囲気を作る能力や、メンバーに理路整然と言語化するスキルも重要となるでしょう。

ファシリテーティング

ファシリテーティングは、チームの活動が円滑に進むようにサポートするスキルです。

具体的には、率先して開発者に必要な情報を共有したり、議論のために話し合う場を設けたりします。

プロジェクトに関する目的の共有やコミュニケーションを通して、メンバー同士が共通の認識を持つよう促すことや、協力しあえる関係を作ることも、スクラムマスターの役割です。

メンタリング

メンタリングでは、対話を通して開発者の自発的な気づきを促します。

答えを教えるティーチングとは異なり、開発者と対話をする中で自ら答えを見つけ出すよう支援するのがメンタリングです。

企業でも若手の育成役としてメンターが設置されますが、スクラム開発におけるメンタリングも同様の役目を果たします。

コーチング

コーチングは、メンバーの気づきを促すことで、チームを問題解決や目標達成に導くスキルです。

はっきりと答えを明示するティーチング、対話を通して気づきを与えるメンタリングとは異なり、ある程度答えを示しつつも自分で解決策を見つけるよう支援します。

たとえば、「円滑なプロジェクト達成に向けて、どのように仕事を進めていくべきか」といった内容を、メンバー自身に考えさせます。

考えさせる機会を設けることでメンバーの主体性を育み、能動的な組織を形作るのです。

シチュエーショナリング

シチュエーショナリングは、チームを客観視し、状況を分析するスキルです。

メンバー間の問題など、チームの現状を分析し要因を特定します。

たとえば、メンバー同士でコミュニケーションが不足している場合には、その原因を見極めて適切な対応を取る、などです。それにより、チームの活動が滞りなく進むようサポートします。

おすすめのスクラムマスターの資格3選

スクラムマスターを目指している方には、以下3つの資格がおすすめです。

  • CSM
  • PSM
  • RSM

これらのスクラムマスターの資格は、単なるペーパーテストと異なり、実践的な研修を受けた後に認定試験を受講する形式となっています。

スクラムマスターの求人には、資格を有していることが歓迎スキルとして挙げられている場合も多く、必須スキルになっている案件もあるようです。スクラムマスターを目指す方は、積極的に上記の資格を取得するようにしましょう。

なお、3つとも受講料は22万円となっており、2回までは無料で受けられます。

CSM

CSM「Certified ScrumMaster:スクラムアライアンス認定スクラムマスター」は、米Scrum Alliance社の認定資格です。スクラムマスターの資格として非常に知名度が高く、スクラムマスターとしてのスキルを保持していることを証明できます。

CSMの資格・試験には、次のような特徴があります。

  • 1日4.5時間 × 4日間の研修
  • 会員資格は2年間
  • 研修はオンライン開催

研修プログラムは、実地でのアウトプットができるよう構成されており、「現場でどのように実践するか」を深く理解できる内容になっているようです。

スクラム運営を机上の空論で終わらせたくない方におすすめの資格といえるでしょう。

参考:Certified ScrumMaster®(CSM®)スクラムアライアンス認定スクラムマスター研修|TIS株式会社

PSM

PSM「Professional Scrum Master」は、Scrum.orgによって提供されている資格です。

Scrum.orgは、スクラムの専門書籍「スクラムガイド」の著者であるKen Schwaber氏が設立しました。

認定試験と共に、ディスカッションと演習を組み合わせた研修も提供されており、スクラムマスターの役割を基礎からしっかりと理解できます。

IT業界に限らず、あらゆる業界においてスクラムマスターを養成しているようです。

そのほか、次のような特徴があります。

  • 1日8時間 × 2日間の研修
  • オンライン講習
  • 講義は日本語、試験は英語(自動翻訳利用可能)

スクラムマスターの権威から、スクラムの理論や原則、アジャイルな計画の立て方などを学びたい方は、受講してみるとよいでしょう。

参考:Professional Scrum Master™ (PSM)|研修・資格|ITプレナーズ

RSM

RSM「Registered Scrum Master」は、スクラム共同考案者のジェフ・サザーランド博士によって作られた資格です。

研修を通して、ハイパフォーマンスなスクラムマスターになるための方法を学べます。

研修の特徴として挙げられるのは、次のようなものです。

  • 1日9時間 × 2日間のワークショップ
  • オンサイト(集合型)とオンラインの2種類
  • 日本語で開催

エクササイズやディスカッション、ゲームが設けられた体験型のワークショップが提供されます。参加者とコミュニケーションを取りながら、能動的に学んでいきたい方におすすめの資格・研修です。

参考:Registered Scrum Master® Training|Scrum Inc.japan

スクラムマスターになる方法

スクラムマスターになる方法として、次の3ステップがロードマップとして挙げられます。

  1. スクラム開発の経験を1~3年積む
  2. スクラムマスターの資格を獲得する
  3. スクラムマスターに抜擢される

それぞれの詳細について解説します。

1.スクラム開発の経験を1~3年積む

スクラムをチームに導入する責務を果たすには、実際に開発者としてスクラム開発を豊富に経験しておく必要があります。

求人サイトにおいても、必須条件として「スクラム開発の経験〇〇年」と設定されていることが多いようです。開発期間を短く区切り、短期間に実装とテストを繰り返していくアジャイル開発は、長期的なプロジェクトとして開発を進めるウォーターフォール開発とは大きく異なります。

アジャイル開発に携わるスクラムマスターになるには、スクラム開発に長期的に携わり、俊敏性の高いソフトウェア開発の知見を幅広く積んでおくことが大切です。

2.スクラムマスターの資格を獲得する

スクラムマスターの資格を取ることで、スキルを身につけていることを客観的に証明できます。

とくにスクラムマスターの試験には、受験の前に研修が設けられているため、単なるペーパーテストと異なり、スクラムマスターに求められる実践的なスキルや知見を身につけることができます。

求人サイトにおいても、必須条件や歓迎条件としてスクラムマスターの資格を保持していることが定められているケースが少なくありません。

上述した3つの資格の中でも最も代表的なのはCSMです。

それぞれの資格にはプログラム内容や理念などに違いがありますが、とくにこだわりのない方はCSMを取得することをおすすめします。

3.スクラムマスターに抜擢される

開発者としてスクラム開発に継続して参画し、信頼を獲得できれば、スクラムマスターへのポジションの引き上げが期待できます。

開発の中でエンジニアとしての実力を発揮し、クライアントやプロジェクトにおける責任者との信頼関係を築いていきましょう。

いきなりスクラムマスターとしての仕事を受注するのではなく、プロジェクトの中で徐々に一部の役割・仕事を任せてもらうこともおすすめです。その過程でスクラムマスターに必要なスキルや経験を身につけられます。

スクラム開発の経験を積む中で、スクラムマスターに必要とされるスキルの習得にも努めるようにしましょう。開発者時代に、スケジュール管理スキルやコミュニケーションスキル、ティーチングスキルなどを磨いておくことで、スクラムマスターとして活躍しやすくなります。

スクラムマスターの将来性

スクラム開発の需要は拡大しており、今後もスクラムマスターとしてのポジションは、日本の企業においても広まっていくことが予想されます。

IT技術は日進月歩であり、現代は不確実性の時代です。そのもとで、アジャイル開発は仕様の変更や追加に対して柔軟に対応できるという強みがあり、時代の流れとの相性が非常によいといえるでしょう。

昨今では、Webアプリの開発をする際にもアジャイル開発の普及が進んでおり、こうした流れは今後もさらに強まっていくと予想されます。

その開発を担うスクラムマスターの需要は、いっそう高まっていくはずです。

まとめ

スクラム開発者としてのキャリアに悩む方は、1つのキャリアパスとしてスクラムマスターも検討してみるとよいでしょう。

スクラムマスターは、チームでのスクラムを確立し、スクラム開発が円滑に進行するよう支援する職種です。

技術力よりも、周囲の人を取りまとめサポートしていくスキルが求められます。そのため、開発者としてプロジェクトに携わる際には、他者とのコミュニケーションにも意識を向け、ティーチングやファシリーティングなどのスキルを鍛えていきましょう。

スキルだけでなく資格も重要なファクターとなるため、本記事でご紹介した研修もぜひ受講してみてください。

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