フリーランスが国民健康保険料を安くする方法とは?仕組みから裏ワザまで徹底解説

国民健康保険はフリーランスの方が多く加入しており、私たちが生きていく上で重要な医療保険制度の一つです。しかし「保険料が高い!」と感じているフリーランスの方も多いのではないでしょうか。国民健康保険料は家族構成や所得によっても変化してきます。

この記事では、国民健康保険料の仕組みから保険料を安くする6つの方法、未加入の場合まで解説します。ぜひフリーランスの方は保険料を抑えて手取りを増やしていきましょう。

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そもそも国民健康保険とは?

国民健康保険という単語は、ほとんどの人が聞いたことがあると思います。

しかし「国民健康保険がどういった仕組みになっているのか」「加入条件があるのか」など詳しくはわからない方も多いでしょう。

ここからは、国民健康保険の概要や仕組み、加入条件について解説していきます。

国民健康保険の概要・仕組み

国民健康保険は、被用者保険や後期高齢者医療制度に加入していないすべての住民を対象とした医療保険です。被用者とは、使用者から賃金を受け取って働く人のことで、会社員を指します。この制度は、都道府県や市町村(特別区を含む)が保険者となる市町村型国民健康保険と、各業種ごとに組織される国民健康保険組合で構成されています。

国民健康保険は、各市町村に保険料を支払うことで、医療費の自己負担額が軽減されます。

通常、医療費の30%が自己負担であり、残りの70%は国民健康保険から医療機関に支払われます。対象者は、自営業者、農業者、会社を退職した人、無職者などです。先述の通り、健康保険が給与から天引きされる会社員は含まれません。

保険料は、次の3つの費用からなり、その合計金額で決まります。

  • すべての世帯に適用される保険料
  • 前年度の収入に基づいて計算される保険料
  • 世帯内の加入者数に応じて計算される保険料

一般的な会社員の健康保険では、前年度の所得ではなく、毎月の給与に基づいて保険料が計算されます。また、健康保険では扶養家族を加えることができますが、国民健康保険では世帯内の全員に保険料が適用される点が異なります。

保険料の支払いは、4月から翌年3月までの1年間分を、6月から翌年3月の期間内におこないます。

国民健康保険への加入条件

国民健康保険の加入条件として、日本国内に在住しており、次の4つに該当しない場合に国民健康保険の被保険者となります。

  •  他の医療保険(健康保険)に加入している方やその被扶養者
  •  生活保護を受けている
  •  後期高齢者医療制度に加入している
  •  短期滞在在留外国人

参考サイト:国民健康保険制度|厚生労働省
参考サイト:国民健康保険制度の概要|厚生労働省

フリーランスと会社員による社会保険の違い

公的医療保険にはいくつか種類がありますが、フリーランスや個人事業主の方が加入するのが、国民健康保険になります。会社員や会社員の家族の方が加入している公的医療保険は、健康保険(社会保険)と呼ばれます。

どちらも似たような名称で混同してしまいがちですが、運営元が異なります。

国民健康保険:住んでいる都道府県や市区町村

健康保険:全国健康保険協会、各種健康保険組合

国民健康保険と健康保険の大きな違いは、傷病手当金が給付されるかどうかです。国民健康保険ではケガや病気で働けなくなった時の保障がありません。また、出産時の出産手当金もありません。

健康保険の場合は、会社と折半で支払いますが、国民健康保険の保険料は全額自己負担になります

国民健康保険健康保険
対象者個人事業主、フリーランスなどの自営業社会社員やその家族
保険料全額自己負担※家族が増えると保険料が変わる勤務先と折半
保険料の計算方法前年度の所得から計算給与額に応じて勤務先が計算
医療費の負担額3割負担
高額医療費制度あり
出産一時金50万円※産科医療補償制度に未加入の場合に医療機関で出産した場合は48.4万円
出産手当金なしあり
傷病手当金なしあり
保険者国民健康保険組合勤務先が所属する団体

参考サイト:国民健康保険とは?加入条件や切り替え時の手続きをわかりやすく解説|ナビナビ保険

国民健康保険は高い?

国民健康保険の納付書をみて、金額が高いと感じた個人事業主やフリーランスの方が多いのではないでしょうか。どのように算出されているのか、間違っている箇所はないかを理解して、納付書の金額が適切かを確認してみましょう。

国民健康保険料は市区町村によって異なる

国民健康保険料の算出方法や徴収方法、納付期限は各市区町村の条例によって定められています。国民健康保険料は、次の3つで構成されています。

  • 医療分保険料
  • 後期高齢者支援金分保険料
  • 介護分保険料

国民健康保険料は、全世帯が負担する平等割と国民健康保険加入者の人数に応じて負担する均等割、前年度の所得に応じて負担する所得割、固定資産に応じて算出される資産割の合計になります。

国民健康保険料は各市区町村によって、賦課方法・割率が異なります。

  • 2方式:所得割と均等割
  • 3方式:所得割と均等割と平等割
  • 4方式:所得割と均等割と平等割と資産割

種類賦課の方法
応益割均等割世帯の子供を含む被保険者数に応じて賦課
平等割世帯ごとに賦課
応能割所得割世帯の被保険者数に応じて賦課
資産割世帯の被保険者の固定資産税に応じて賦課

参考サイト:国民健康保険料・保険税のしくみ|厚生労働省

例えば、世田谷区と大阪市とでは次のような違いがあります。

区分所得割額均等割額



世田谷区
基礎(医療)分(最高限度額65万円)加入者全員の賦課基準額×7.17%加入者数×45,000円
支援金分(最高限度額22万円)加入者全員の賦課基準額×2.42%加入者数×15,100円
介護分(最高限度額17万円)40歳~64歳の方の賦課基準額×2.30%40~64歳の方の加入者数×16,200円

※世田谷区に平等割額はありません。

区分平等割額所得割額均等割額




大阪市
基礎(医療)分(最高限度額65万円)1世帯当たり
30,321円
被保険者数×30,798円算定基礎所得金額×8.78%
支援金分(最高限度額22万円)1世帯当たり
10,494円
被保険者数×10,659円算定基礎所得金額×3.09%
介護分(最高限度額17万円)なし介護保険第2号被保険者数×19,543円算定基礎所得金額×2.94%

参考サイト:保険料の計算方法|世田谷区
参考サイト:保険料の決め方|大阪市

国民健康保険料の計算シミュレーション

実際に世田谷区と大阪市を例に国民健康保険料の計算シミュレーションをしていきます。

*条件

年齢:~39歳、年金収入・その他所得:0円、固定資産税:0円

世田谷区在住の39歳以下で年収500万円と仮定した場合、1年間で350,700円になります。

また、年収が1000万円の場合では、1年間で774,500円になります。

次に、大阪市の場合です。39歳以下で年収500万円と仮定した場合、1年間で432,400円になります。また、年収が1000万円の場合では、1年間で850,000円になります。

参考サイト:国民健康保険料を簡単に計算!国保シミュレーション | 税金・社会保障教育

国民健康保険料を安くする裏ワザ

以上のシミュレーションの通り、健康保険料は決して少額ではないことがわかります。

そのため、個人事業主やフリーランスの中には国民健康保険料が高く、少しでも安くしたいと考える方も多いでしょう。

ここからは国民健康保険料を安くする裏ワザを紹介していきます。

紹介するのは、次の6つです。

  • 国民健康保険免除・減免制度を利用する
  • 社会保険料控除を利用する
  • 国民健康保険組合に加入する
  • 青色申告特別控除を使う
  • 世帯合併する
  • 法人化する

国民健康保険免除・減免制度を利用する

災害や収入の減少などの理由で国民健康保険料の支払いが困難な場合、一部免除や減額が適用されることがあります。国民健康保険の免除・減額条件は、各市町村によって異なりますが、世帯全員の所得を合算した上で決定され、70%、50%、20%のいずれかの減免率が適用されます。

軽減基準額軽減基準となる所得金額
7割減額基準額43万円+{10万円×(給与所得者等の数ー1)}
5割減額基準額43万円+{28.5万円×被保険者数)+{10万円×(給与所得者等の数ー1)}
2割減額基準額43万円+{52万円×被保険者数)+{10万円×(給与所得者等の数ー1)}

参考サイト:国民健康保険の免除について|Monye Forwardクラウド給与

社会保険料控除を利用する

自身の国民健康保険などの社会保険料を納税した時や配偶者やその他親族の社会保険料を支払った場合に利用することができます。社会保険料控除の対象になる社会保険料は、国税庁のホームページに記載されています。

控除される金額は、その年に支払った額あるいは給与や公的年金から差し引かれた額の全額になります。社会保険料控除を利用する場合には、給与所得者の保険料控除申告書を確定申告時に提出する必要があります。

参考サイト:社会保険料控除|国税庁

国民健康保険組合に加入する

国民健康保険組合は、国民健康保険法に基づき、同じ業種・職業別に構成されている組織です。国民健康保険は前年度の所得を元に保険料が決まりますが、国民健康保険組合は収入に関係なく固定の額になります。そのため、収入の多い人は、国民健康保険組合のほうが保険料が安くなる可能性があります。

国民健康保険組合は、保険料が安くなる可能性がありますが、住んでいる場所や職業などによって、加入対象者が限られているため、加入を希望したからといって、必ず加入できるものではありません。

参考サイト:国保組合の事業と運営|全国国民健康保険組合

青色申告特別控除を使う

確定申告には白色申告と青色申告の2つの種類があり、青色申告は「簡易簿記」、「現金式簡易簿記」、「複式簿記」の3つに分類されています。

特に複式簿記では、最大65万円の控除が受けられるため、節税効果が大きくなります。青色確定申告を利用することで、青色申告特別控除を通じて課税所得を減らすことができ、結果として納税額を抑制することが可能です。

▼関連記事
フリーランスの青色申告のやり方は?初めての方でもわかりやすく解説

参考サイト:No.2070 青色申告制度|国税庁
参考サイト:個人事業主が業務委託で得た報酬の税金は?支払調書は出る?|Relance

世帯合併する

国民健康保険料を安くする方法に、世帯合併という方法があります。同じ住所に住んでいても、世帯主が異なるという2世帯住宅があります。世帯合併では、片方の世帯に入り、1つの世帯にすることを指しています。

世帯合併することで、国民健康保険料が安くなる可能性があります。国民健康保険料には上限(税70万円に満たない)があり、世帯単位で定められています。たとえば2世帯住宅で親の保険料が55万円、子の保険料が45万円だった場合、合計100万円の保険料を支払う必要がありますが、世帯合併することで上限以上は支払う必要がなくなります。

また、保険料の内訳のひとつである「平等割」も世帯単位でかかってくるため、世帯合併することで平等割の負担額を減らすことも可能です。

法人化する

法人化することでも国民健康保険料を安くすることができるでしょう。法人化することで、健康保険組合や協会けんぽに加入できるようになるため、国民健康保険よりも賦課額が低くなる可能性があります

また、法人化することで、自身の給与を役員報酬として経費に計上することできます。役員報酬は給与所得控除の対象になっているため、控除額分だけ所得を減らすことができ、節税になります。

▼関連記事
フリーランスは法人化すべき?最適なタイミングやメリット・デメリットを紹介

参考サイト:個人事業主が法人化する最適なタイミングとは?メリット・デメリットからインボイス制度の対策について解説|freee

国民健康保険への未加入は可能?未加入の場合のデメリットは?

ここまでで国民健康保険料の仕組みや計算方法、国民健康保険料を安くする方法について説明しました。

しかし、そもそも国民健康保険に加入しなければ、保険料がかからないのではないかと考える方もいることでしょう。

最後に、国民健康保険への未加入は可能なのか、未加入の場合のデメリットについて解説をしていきます。

国民健康保険の加入は義務

国民健康保険の加入は国民健康保険法により定められている義務であり、任意ではありません。国民健康保険法第5条と6条により、会社などの健康保険や長寿医療制度に入っていない人、生活保護の対象でない人は全員国民健康保険に加入する義務があると定められています。

また、企業退職後に国民健康保険の切り替えなどを行っていない場合でも、加入日まで遡り、未払いの保険料を請求されます。

国民健康保険未加入の場合は医療費・入院費が全て自費になる

健康保険や国民健康保険に加入している場合は、通院や入院時の負担(保険適用のものに限るが)は3割負担となりますが、未加入の場合は10割負担となり、全てを自身で支払わなければなりません

さらに、健康保険への加入は法律によって定められた義務なので、未加入の場合は10万円の罰金を課される可能性があります。

国民健康保険未加入の場合は高額療養費制度の対象外となる

国民健康保険や健康保険に加入していると、医療機関や薬局などで支払う医療費が1ヶ月で上限を超えた場合、「高額療養費制度」が適用されます。

高額療養費制度は、自己負担限度額を超えた額を、後から払い戻せる制度です。国民健康保険に未加入の場合は当然この制度が受けられず、どれだけ高い医療費を支払っても、全額自己負担となってしまいます。

参考サイト:高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省

55%以上が月額100万円以上!

まとめ

本記事では、国民健康保険料の仕組みから、保険料を安くする6つの方法、未加入の場合まで、解説しました。

フリーランスや個人事業主になることで、会社員時代は半額負担であった保険料をすべて自分で負担しなければなりません。

以上で紹介した保険料を安くする方法を参考に上手に支出を抑えて、手取りを増やしてみてはいかがでしょうか。

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