【個人事業主向け】接待交際費の上限金額は?使いすぎたけど大丈夫?
個人事業主が確定申告をおこなう際、節税ポイントとなるもののひとつに「必要経費」が挙げられます。必要経費を漏れなく計上することが課税所得を抑えて、所得税の節税につながります。
しかし、「接待交際費っていくらまで計上していいの?」「ゴルフや観光の接待費用まで計上できる?」といった悩みを抱えている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。どのような費用を接待交際費に含めていいのか、そしていくらまで計上できるのかわからない方も少なくないはずです。
接待交際費をはじめとする経費の計上については、正しく把握しておかなければ所得の過少申告につながり、税務署からの指摘や修正申告・ペナルティの支払いにつながる可能性もあります。
本記事では、個人事業主の接待交際費における上限金額や、接待交際費に含まれる費用・含まれない費用の例をご紹介します。本記事を読むことで、接待交際費の扱いや、経費計上の注意点が把握できるので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
接待交際費とは
個人事業主が接待交際費を経費として申告できるのは、必要経費として認められる費用のみです。「必要経費」とは、具体的にどのような費用を指すのでしょうか。所得税では、必要経費に算入できる費用は以下のように定義されています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
つまり、接待交際費を必要経費に算入できるのは、事業収入を得るために「直接要した費用」「販売費、一般管理費その他業務上の費用」に該当する場合です。
所得税では、接待交際費は基本的に必要経費にはならないが、その接待の相手方、接待の理由などから見て専ら業務の遂行上直接必要と認められるものに限り、必要経費にすることができる、と規定しており、かなり厳しいです。
ここで重要なのは、支払ったという事実ではなく、その支払の相手が誰で、どういう目的で接待したのか、ということがはっきりしていて、業務遂行上必要なものだということを証明できるものしか必要経費と認められない、ということです。領収書があるからと、安易に必要経費にしてはいけない、ということです。
身内や友人などプライベートな付き合いで発生した飲食費や観光費用は、もちろん経費にはなり得ません。
接待交際費の上限金額は?
個人事業主の場合、必用経費と判断されるものであれば、接待交際費に上限はありません。接待交際費とみなされる支出は、すべて経費として計上できます。
会社員のとき、「交際費は損金にならないから、交際費と広告宣伝等、区分には気を付けるように」と言われた経験がある人も多いかと思いますが、個人事業主の場合、必要経費になる上限額というものはありません。
接待交際費になるもの
接待交際費には、具体的にどのような費用を計上できるのでしょうか。
例として、以下のような費用は、業務上必要なものであれば、接待交際費として計上できます。
・取引先や同業者との交流(オンラインサロンなど)の会食費
・取引先へのお中元やお歳暮、ご祝儀、お香典にかかる費用
・取引先をゴルフや旅行に招待する際の費用
・取引先から招待されたパーティーの費用
たとえば、同業者や取引先との交流は、事業に必要な交際費に該当するため、費用を接待交際費として計上できます。取引先へのお中元にかかる費用も同様です。
ゴルフや観光など、高額になりやすくグレーゾーンとみなされがちな接待の費用に関しても、業務上、どうしても接待しなければならない理由があれば接待交際費に含められます。重要なのは、必要性を証明する説得力ある証拠です。
接待交際費にならないもの
次のような支払は、必要経費とは認められません。
・友人や家族との食事、旅行代
・個人事業主自身の生活や健康管理のための費用
・個人事業主自身の私的な買い物
必要経費として認められる接待交際費は、あくまで業務に必要不可欠なものです。友人や家族との食事・旅行代や、個人事業主本人の生活やプライベートに関わる費用を接待交際費として計上することはできません。
接待交際費は本当に無制限?
個人事業主の場合、接待交際費の上限は確かにありません。しかし、金額が多い場合は、本当に個人的な支払が混じっていないか点検した方がよいでしょう。
接待交際費として経費にするときの注意点
接待交際費を経費として計上する際には、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。
接待交際費はあくまでも、事業に直接必要な費用でなければなりません。言い方を変えると、事業に直接必要な費用だと証明できるのであれば、高額な経費であっても正しく計上できます。仮に税務調査が入ったとしても、正当性の主張ができるような準備をしておけば安心です。
「接待交際費とは」のところにも書きましたが、「この接待交際費は必要経費だ」ということを証明する資料としては、「支払った」ということの証明よりも、「必要な理由」が重要です。どういう目的で、誰を接待したのかわかるように、記録を残しておきましょう。
接待交際費に限らず、経費計上の際には帳簿をつけ、帳簿のもとになる請求書や領収書等も保存するのが基本です。青色申告の場合、関係書類は7年間の保存義務があるため、確定申告が終わっても破棄せずに保存しておきましょう。
参考サイト:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁
接待交際費として経費計上する際は、領収書などに費用の詳細を記録しておくことが大切です。
・年月日
・参加者
・参加者との関係性
・参加者の人数
・場所
以上のような情報を記載しておくことで、事業に直接必要な費用だと証明するときに役立ちます
領収書等のおすすめ管理法
個人事業主に必要不可欠な確定申告を、漏れなく確実に、そして効率的におこなうためには、領収書等を正しく管理しておかなければなりません。
「領収書等」と書きましたが、実際には、領収書より請求書の方が重要なことも多いです。なぜなら、領収書は支払った金額が書いてあるだけですが、請求書には請求内容=支払の内容が書いてあるからです。銀行振込で支払う場合には、領収書は省略されることも多いです。
また、「領収書等」と書きましたが、電子データで受け取った領収書等は、電子データを保管しなければなりません。メールに添付されたPDFの請求書や、サイトにアクセスしてPDFを入手した請求書等です。2023年までは、紙でもよいという猶予措置がありますが、2024年からこの猶予措置はなくなります。なお、紙で受け取った請求書等は、紙を保管しなければなりません。
ただし、一定の条件(全てタイムスタンプを押す、等)を満たせば、紙で来た請求書等を電子データで保管し、紙の原本は廃棄してもよい、という制度もあります。条件をクリアするためには、専用アプリの導入が必要ですが、コストを勘案して、検討するのがよいかもしれません。
参考サイト:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
まとめ
個人事業主の場合、必要経費と認められる接待交際費に上限はありません。事業に直接必要なものであれば、上限なく経費計上が可能です。
接待交際費として経費計上するためには、業務のために直接必要なものであることを証明するための資料を揃えておくことが重要です。「領収書があるから大丈夫」と安易に考えないようにしましょう。
監修者:芝会計事務所 代表 公認会計士・税理士
吉田恵子
⚫︎1978年~1993年:昭和監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)勤務
⚫︎1994年:芝会計事務所設立
個人・法人の税務・会計をトータルにアドバイス。
⚫︎著作:「はじめて課税事業者になる人のための消費税の届出・計算・申告」「副業に関する改正所得税基本通達のポイント」(旬刊経理情報2022/11/20)他
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