フリーランスは契約トラブルから身を守ろう!原因や事例、対処法を紹介

フリーランスとして活動していく以上、契約上のトラブルについて把握し、防止することは必要不可欠です。しかし、フリーランスが巻き込まれるトラブルの種類までは把握しきれておらず、対策を取ろうにもどう動けばよいかわからないと考えている方も多いでしょう。

本記事では、フリーランスが巻き込まれやすい契約トラブルについて、トラブルの原因や事例も含めて解説します。トラブルに巻き込まれた際の対処法もあわせてご紹介しているので、フリーランスとしての活動を安心かつスムーズなものにするためにも、ぜひ参考にしてください。

目次

フリーランスで契約トラブルを経験している人は5割以上

フリーランスの契約トラブル内容や原因に触れる前に、そもそもフリーランスという働き方が契約トラブルに巻き込まれやすいことを、頭に入れておきましょう。フリーランスとして活動している人の多くが、契約に関するトラブルを経験しています。

実際、フリーランスの契約トラブルに対応してくれる「フリーランス・トラブル110番」のデータによると、契約トラブルを経験したフリーランスの人口は、全体の5割以上にものぼるということがわかっています。

「フリーランス・トラブル110番」への相談内容の多くは、報酬の支払いや契約内容に関するものです。このことから、フリーランスとして活動する上では「トラブルが発生しやすい働き方である」ことはもちろん、トラブルの対処法や事前の対策を把握しておく必要があるといえるでしょう。

参考:フリーランス・トラブル110番の相談実績について|厚生労働省

フリーランスが契約トラブルに巻き込まれやすい原因

そもそもフリーランスは、取引上のパワーバランスの悪さが原因となり、トラブルに巻き込まれやすい働き方です。

発注側である企業がフリーランスの人材に対して業務を「委託」する点が、一般的な「雇用」とは異なります。そのため、いわゆる対等の立場にはなれず、フリーランスは発注側よりも立場が弱くなってしまいがちです。

フリーランスの仕事は、発注先との口約束で進められるものも少なくありません。契約書を作らないまま業務が始まることも多く、発注側によるコントロールで働き方が左右されてしまいがちになるでしょう。

また、契約書がないことを進言したくても、進言を理由に発注がストップしてしまうのではないかなどと考え、フリーランス側からは言い出せなくなることも多々あります。そのため、後ほど解説する報酬や業務範囲、損害賠償に関するトラブルが発生してしまいやすくなるのです。

フリーランスによくある契約トラブルの種類

フリーランスが巻き込まれやすい契約トラブルについて、以下3種類の観点にわけてご紹介します。

  • 報酬に関する契約トラブル
  • 業務範囲や納期に関する契約トラブル
  • 損害賠償に関する契約トラブル

上記に該当しない契約トラブルもあわせて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

報酬に関する契約トラブル

フリーランスが巻き込まれやすく、かつ生活に直接的な悪影響を与えるのが、報酬に関する契約トラブルです。

主な報酬トラブルとしては、契約書の内容が曖昧であることや、そもそも契約書を結んでいないことによる支払いの遅延が挙げられます。また、報酬が支払われない、正当な理由もなく報酬を減額される、といったトラブルも珍しくありません。

報酬に関する契約トラブルは、正しく検収がおこなわれていない場合にも発生しがちです。フリーランス側が納期前に納品しても、月内に検収がされなかったという理由で、支払いの遅延が発生する場合もあります。

報酬に関する契約トラブルは、契約書に明確な規定がない場合は泣き寝入りになる可能性も高いため、報酬に関する内容を契約前にしっかりと確認しておきましょう。

業務範囲や納期に関する契約トラブル

フリーランスと発注側の間とで認識の相違があり、業務範囲や納期に関する契約トラブルが発生することもあります。

業務量や業務幅が当初の予定範囲を超えている、修正や手戻りが多いなど、契約・面談段階で聞いていた話と異なる状況下で発生するトラブルです。また、納期が突然前倒しとなることによるトラブルもあります。

フリーランスは仕事を振られると、断ることによって仕事がなくなる事態を恐れ、安請け合いしてしまいがちです。しかし、安請け合いを繰り返すことは、かえって自分の首を絞めることになります。さらに、良かれと思って安請け合いし、結果として依頼内容を遂行できなかった場合は、フリーランス側に責任の所在があるといわれることもあるため、注意が必要です。

損害賠償に関する契約トラブル

発注側の都合ではなく、フリーランス側の不備で契約トラブルが発生することもあります。業務における納期遅れや情報漏洩、著作権侵害や納品物の欠陥などが代表例です。

これらは意図的なものではないとしても、発注側が損害を被ったと判断してしまったら、損害賠償の対象となってしまいます。

損害賠償につながるトラブルは、フリーランス側ではなく発注側の都合で発生することも珍しくありません。契約時点で掲示した個人情報が発注側の不備で外部に漏れた場合などが、例として挙げられるでしょう。

その他の契約トラブル

フリーランスが巻き込まれやすい契約トラブルには、ほかにもさまざまな種類があります。主に、契約書を結ばない・結べないことによるトラブルが挙げられるでしょう。

取引が停止されてしまうことを恐れ、契約書を交わしたいと伝えにくい…などが代表例です。契約書を交わさなければ、報酬や業務範囲などのトラブルが発生しやすいものですが、取引を停止されるぐらいなら…と言い出せないフリーランスも多く、不満や懸念を抱えてしまう傾向にあります。

また、クライアントと突然連絡が取れなくなり、意図せず仕事がなくなってしまう場合もないとはいえません。正当な理由もなく突然取引を停止されるなど、フリーランスは契約書を結んでいないことでさまざまな契約トラブルを被りやすい働き方といえるでしょう。

フリーランスによくある契約トラブルの事例

フリーランスに多い契約トラブルの事例を、以下3つの観点からご紹介します。

  • 報酬に関する契約トラブル
  • 業務範囲や納期に関する契約トラブル
  • 損害賠償に関する契約トラブル

フリーランスとして活動していく中で直面しやすいトラブルであるため、自身に降りかかる可能性も考慮し、確認しておきましょう。

報酬に関する契約トラブル事例|報酬未払い

トラブルの概要「翌月25日の支払い」という契約に対し、3か月目から支払いが遅れるようになった
相談者の状況支払いの遅延に対して抗議したところ、クライアントより「支払日に了承できないなら契約を続けられない」といわれてしまった
解決までの流れWeb相談によるコンサルティング契約の内容確認支払いの遅延を認める証拠などを探し出す発注側の資本金が1000万円未満であったため、下請法は適用できないと判断和解あっせんの手続きを選択し、話し合いでの解決を進めるこれまでの未払い分を支払った上で契約を見直すと決定「報酬の減額」を折衷案として提案・和解

業務範囲や納期に関する契約トラブル事例|想定外の業務量

トラブルの概要発注側がフリーランス側に業務を一任したにもかかわらず、後出しによる受取拒否などを発生させた
相談者の状況成果物の仕上がりに関するヒアリング時に「すべて任せる」とされたため、自身で考えたものを作成・納品したが、イメージと違うなどの理由を後から伝えられ、受け取りを拒否された
解決までの流れWeb相談を受けた相談先が発注側とフリーランス側のやりとりを確認フリーランス側がコンセプトなどをヒアリングしているのに、発注側が対応していないことを確認契約書は交わしていないものの、過去に参加した案件と同等の報酬はもらいたいと和解あっせんを選択フリーランス側が要求する金額の8割を発注側が支払うとし、今後は打ち合わせを強化すると約束

損害賠償に関する契約トラブル事例|突然の弁償代請求

トラブルの概要フリーランスが担当した業務に対するクレームが発注側に入ったことで、損害賠償を請求された
相談者の状況ヘアメイクの仕事で担当したモデルの私物に欠損を発生させてしまったことで、報酬の返金と50万円の弁償代を請求された(フリーランス側はクレーム内容に関する記憶がない)
請求は拒みたいが、訴えられる可能性も考慮し早急に解決したいと考えている
解決までの流れWeb相談を受けた相談先が発注側とフリーランス側それぞれに仕事時の状況をうかがって、損害賠償請求権があるかを確認私物に欠損があったのは事実だが、50万円の弁償代に値する損害ではないと判断発注側はクライアントに迷惑をかけたことに変わりはないと主張話し合いの結果、フリーランス側に報酬の返金は求めないものの、私物の欠損に対するお詫び代5万円を支払うよう約束今後発注側からフリーランス側に請求が発生しないこともあわせて約束することで和解

フリーランスが契約トラブルに巻き込まれた時の対処法

トラブルの原因や事例を把握していても、実際に自分が巻き込まれた際にどうすべきかわからなくなることもあるでしょう。

フリーランスが契約トラブルに巻き込まれた際におこなうべき3つの対処法について解説します。

  • 契約トラブルが発生したらまずは契約内容を確認する
  • 契約内容についてクライアントと話し合う
  • 解決できない場合は弁護士会や裁判所を介した手続きを検討する

詳細を見ていきましょう。

契約トラブルが発生したらまずは契約内容を確認する

契約トラブルが発生しても、慌てず、冷静に事実確認をした上で契約内容を確認しましょう。契約内容を確認する際には、契約書に記載されている以下の項目から、発生したトラブルの内容に応じた項目をしっかりと見るようにしてください。

  • 報酬の支払い期限・方法
  • 修正対応の範囲・回数
  • 損害賠償義務
  • 著作権の取り扱い
  • 契約解除の条件・方法

上記を確認しておくことで、不当な支払い遅延や賠償請求を回避できる可能性があります。

契約内容についてクライアントと話し合う

契約トラブルの原因は、単なるコミュニケーションのミスである可能性もあります。訴訟などを起こす前に、まずはクライアントとの話し合いを試みるようにしましょう。

話し合いをした上で、契約内容の擦り合わせや、契約変更・解除に関して確認を進めてください。

なお、訴訟対応などに発展した際にも役立てるよう、話し合いのやりとりは記録しておくことがおすすめです。クライアントとの連絡がつかない、取り合ってもらえないなどの事態が発生した場合は、第三者への相談も検討しましょう。

解決できない場合は弁護士会や裁判所を介した手続きを検討する

クライアントとの話し合いでトラブルを回避できない場合は、弁護士などの第三者を介した手続きを検討すべきです。

契約トラブルは、話し合いがこじれてしまうと訴訟に発展する可能性があります。その点、専門家である弁護士に相談することで、スムーズかつ確実な解決につなげられるでしょう。

契約トラブルに関して弁護士に依頼する際には、和解あっせんや仲裁(弁護士会)などが選択肢として挙げられます。また、調停や訴訟、60万円以下の少額訴訟も、選択範囲となるでしょう。

とくに少額訴訟であれば、通常の訴訟よりも短期間での解決が見込めるので、トラブル対応にかける時間を極力短くしたい場合におすすめです。

フリーランスが契約トラブルに巻き込まれた時の相談窓口

フリーランスが契約トラブルに巻き込まれた際は、以下の相談窓口を利用しましょう。

  • フリーランス・トラブル110番
  • 法テラス
  • 任意の弁護士
  • 下請かけこみ寺
  • よろず支援拠点

フリーランスの契約トラブルに対応してくれる相談窓口の概要について、1つずつ詳細を解説します。

フリーランス・トラブル110番

フリーランス・トラブル110番とは、フリーランスが直面しやすい契約トラブルなどを、弁護士に相談できるサービスのことです。

相談は無料で、かつ本名を出さず匿名で相談できるのがメリットといえます。和解あっせんや訴訟にも対応可能です。

過去のトラブル事例も公開されているので、自身が直面したトラブルにちかい事例を探した上で、相談を検討しましょう。

参考:フリーランス・トラブル110番

法テラス

フリーランスの契約におけるトラブルをどこに相談すべきかわからない場合は、法的トラブル解決に特化した相談所である「法テラス(日本司法支援センター)」に相談してみましょう。

法テラスは、全国各地に設置されており、かつ無料で相談を受けつけているため、第三者への依頼費用をできるだけ抑えたい方におすすめです。ただし、法テラスへの相談が無料となるには、収入に関する一定条件を満たしている必要があるため、注意してください。

参考:日本司法支援センター 法テラス

任意の弁護士

ほかの方法と比べて費用はかかるものの、法律の専門家である弁護士に依頼することでフリーランスの契約トラブルはスムーズかつ確実な解決へとつながります。

知り合いに弁護士がいる、過去に弁護士へ依頼してトラブルを解決した知人がいる場合は、まず弁護士に相談してみるとよいでしょう。

初回の相談を無料で受けつけている弁護士も多いので、最寄りの法律事務所に相談するところから始めてみてもよいかもしれません。

下請かけこみ寺

下請かけこみ寺とは、中小企業庁が全国に拠点を構えている、取引上の悩みなどを解消できる機関のことです。

対面相談だけではなく、オンラインでの相談も可能なので、スケジュールの確保が難しい方にも適しているでしょう。フリーランスが直面しやすい契約上のトラブルのみに留まらず、裁判外紛争解決手続(ADR)への対応が可能な点も、下請かけこみ寺のメリットです。

参考:下請けかけこみ寺|公益財団法人 全国中小企業振興機関協会

よろず支援拠点

よろず支援拠点とは、国が設置した無料の経営相談所です。さまざまな分野の専門家に無料で相談でき、フリーランスの契約トラブルにも対応してもらえます。

全国に拠点を構えているため、主要都市以外にお住まいの方でも安心して相談できるのが嬉しいポイントです。

また、適切な支援機関の紹介や、支援機関の相互連携をコーディネートもしてくれるので、トラブル解決の糸口を探すきっかけとして利用するのもよいでしょう。

参考:中小企業・小規模事業者のための経営相談所|よろず支援拠点

フリーランスが契約トラブルを防ぐ方法

フリーランスが自分自身で契約トラブルを防ぐために覚えておきたい5つの方法は、以下のとおりです。

  • フリーランスエージェントを利用して信頼できるクライアントを選ぶ
  • 契約前に内容をよく確認したうえで契約書を締結する
  • 契約内容に関わる重要なやりとりは書面化するなど証拠を残す
  • 確実に業務を遂行してクライアントと信頼関係を築く
  • フリーランス向けの損害賠償保険に入っておく

それぞれ詳細を解説します。

フリーランスエージェントを利用して信頼できるクライアントを選ぶ

契約トラブルを防ぐためには、直契約ではなく、フリーランスエージェントを経由するのがおすすめです。Relanceなどのフリーランスエージェントを経由すれば、信頼性のあるクライアントを選択できたり案件を獲得できたりする可能性が高まるでしょう。

また、トラブルが発生した際も、フリーランスエージェントが交渉を代行してくれるので、安心です。

参考:Relance

契約前に内容をよく確認したうえで契約書を締結する

フリーランスにおいては、契約書を結ばないままに業務を進めている…というパターンも少なくありません。契約書を結ばない案件では、トラブルが発生する可能性が高まります。

まずは、しっかりと契約内容を確認した上で契約書を締結することが大切です。

契約書については、フリーランス側から申し出にくい状況もありますが、報酬の未払いなど、契約書を結ばないことで発生するトラブルは図り知れません。

できる限り契約を締結する方向で、クライアントをコントロールしましょう。

契約内容に関わる重要なやりとりは書面化するなど証拠を残す

直契約の際、業務内容や報酬に関する重要な内容は、口頭だけでなく書面化した上で契約を結びましょう。口約束で安請け合いをしてしまうと、トラブルが発生しやすいばかりか、逃げ道も失ってしまいます。

自分の身を守るためにも、重要なやりとりは必ず書面もしくは文面で残しておくことが大切です。

契約内容に変更があった場合などは、メールなどを介してその旨をやりとりすることで証拠を残せます。

確実に業務を遂行してクライアントと信頼関係を築く

クライアントとの信頼関係が構築できていれば、そもそも契約に関するトラブルは発生しにくいといえるでしょう。信頼関係をしっかりと構築するためには、クライアントから依頼された業務をしっかりと遂行することが大切です。

納期の順守やクオリティの担保、情報漏洩防止の徹底など、クライアントが求める業務品質さえ担保できていれば、突発的な契約トラブルが発生することはほとんどないでしょう。

フリーランス向けの損害賠償保険に入っておく

契約トラブルが発生した際の備えとして、フリーランス向けの損害賠償保険に入っておくのもおすすめの方法です。

損害賠償保険に加入しておくことで、トラブルが発生した際もプロに対応を代行依頼できます。

主なフリーランス向けの損害賠償保険は、以下を参考にしてください。

FReeNANCeには、業務中の事故などに対応できる「フリーナンスあんしん補償」があるため、安心です。

フリーランス協会であれば、報酬トラブルにおける弁護士相談費用を補償できる「フリーガル」などがあります。

訴訟対応時の費用に関するリスクを軽減するために、備えとしてフリーランス向けの損害賠償保険に加入しておくことを検討しましょう。

参考:FReeNANCe

参考:フリーランス協会

まとめ

本記事では、フリーランスが直面しやすい契約上のトラブルについて、主な原因やトラブルの種類といった観点から解説しました。

フリーランスは、契約における立場上、報酬や業務範囲、損害賠償といった各種トラブルが発生しやすい働き方といえます。仮にトラブルに巻き込まれた際には、契約内容についての確認・話し合いを進めながら、必要に応じて専門知識を有した第三者の協力を仰ぎましょう。

フリーランスが契約上のトラブルを回避するには、主な相談先について把握しながら、本記事でご紹介した対処法を実践することが大切です。

フリーランスとして働く中でのトラブルを防止するために、本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

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