フリーランスは法人化すべき?最適なタイミングやメリット・デメリットを紹介

フリーランスで活動している方の中には、法人化を検討している方もいるのではないでしょうか。法人化することで節税効果を得られたり社会的な信用力が高まったりと、多くのメリットがあります。

本記事のテーマは「フリーランスの法人化」です。

フリーランスが法人化するのに最適なタイミングや、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。また、法人化するまでの流れや相談窓口についても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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フリーランスが法人化するのに最適なタイミング

フリーランスが法人化するのに最適なタイミングは、複数考えられます。

たとえば、事業の拡大を考えているときや、法人としての取引を求められることが多くなったときなどです。

ここからは、年収と売上規模を基準とした法人化に最適なタイミングについて、より具体的に詳しく解説します。

目安1|事業所得が800万円を超えたとき

フリーランスが法人化するタイミングの決め方の1つに、事業所得が800万円を超えたタイミングが挙げられます。ちなみに事業所得とは、自身が営む事業から得られる所得のことです。

日本の所得税は、所得金額に応じて税率が増える累進課税制度を採用しています。

以下の分離課税に該当するものなどを除き、5%~45%の7段階で税率が決定する仕組みです。

  • 配当所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得(不動産屋株式の売却益)
  • 利子所得 など

フリーランス(個人事業)の所得税も所得額に応じて上昇し、最大45%の所得税が課されますが、法人税の場合は最大でも23.20%です。

たとえば、フリーランスとしての所得が695万円〜899.9万円である場合の税率は23%、900万円~は33%、40%、45%とどんどん上がっていきます。一方、法人化して法人税が適用されれば、800万円までで15%、800万円超から一律23.20%です。そのため、所得が800万円を超えたら、所得税を抑えるために法人化を検討する余地があるといえるでしょう。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

目安2|売上高が1000万円を超えたとき

法人化するタイミングの決め手となる2つ目は、売上高です。年間の売上高が1000万円を超えると、個人事業主(フリーランス)・法人関係なく、その2年後から消費税の納税義務が発生する「消費税課税事業者」となります。

法人化した最初の2年間における資本金が1000万円未満ではありますが、「消費税課税事業者」となる義務が発生したタイミングで法人化すれば、売上基準がリセットされ、最低2年間の免税期間をつくれるため、消費税の納付義務がなくなるのです。

ただし、2023年10月1日からインボイス制度が開始され、年間の売上高が1000万円以下であっても、適格請求書発行事業者になれば課税事業者となるケースが発生しました。「年間の売上高が1000万円を超えたとき」はあくまで法人化の1つの目安であるため、ご注意ください。

参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁
参考:適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-(2023年7月)|国税庁

フリーランスが法人化するメリット

フリーランスが法人化するメリットは、税金の減額や課税事業者適用までの延長などだけではありません。

ここからは、フリーランスが法人化する以下のメリットについて、詳しく解説します。

  • 節税につながる
  • 賠償範囲を出資の範囲内に制限できる
  • 決算月を任意で選べる
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる
  • 社会的信用力が高まる

法人化を迷っている方は、上記メリットをご確認の上で判断しましょう。

節税につながる

法人化することの最も代表的なメリットは、さまざまな節税効果です。

節税ができれば、手元資金が増えるなどの効果を得られるでしょう。具体的には、役員報酬などを活用した経費幅の拡大、消費税納付の2年間免除、赤字(繰越欠損金)の10年間繰り越しなどが挙げられます。

詳細を確認していきましょう。

役員報酬などを活用することで経費の幅を広げられる

法人化すれば、自分の給与(役員報酬)など経費計上できるものが増えるため、節税につながるでしょう。フリーランス(個人事業主)の場合、売上高から事業に活用した必要経費を差し引いた額が所得となり、差額に所得税が課せられます。

もちろん、法人化しても役員報酬は給与所得に該当するため、受け取る額に応じて所得税が課せられますが、役員報酬を経費にすれば課税所得が0円となり法人税が発生しません。

法人化すれば、役員に対する退職金も経費に計上でき、損金としての扱いが可能です。個人事業主でも、一定の条件を満たせば従業員に対する給与や賞与などは必要経費に計上できますが、本人の退職金は経費計上できません。

法人化では退職金も控除の対象となるため、法人の所得を減らすことができ、節税につながります。

参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
参考:No.5208 役員の退職金の損金算入時期|国税庁

消費税の納付が2年間免除される場合がある

前述のとおり、条件を満たせば消費税の納付が2年間免除されるため、節税につながります。

フリーランスでも法人でも、年間の売上高が1000万円を超えれば、その2年後から課税事業者として消費税を納付しなければなりません。

消費税課税事業者となる義務が発生したタイミングで法人化すれば、売上の基準がリセットされるため、2年の免税期間をつくれます。年間の売上高1000万円を超えてから法人化することで、消費税の納付義務が4年間ありません。

ただし、消費税納付免除には法人化した最初の2年間における資本金が1000万円未満であることが条件となるため、ご注意ください。また、インボイス制度の開始により、適格請求書発行事業者であれば、年間の売上高が1000万円以下でも消費税の納付義務が免除されません。

参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁
参考:適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-(2023年7月)|国税庁

赤字(繰越欠損金)を10年間繰り越せる

法人となれば、赤字の場合に赤字(繰越欠損金)を10年間繰り越せるため、節税につながります。

青色申告をおこなっているフリーランス(個人事業主)でも、赤字を翌年度以降に持ち越し翌年度以降の事業所得と相殺できますが、繰越期間は3年間と短期です。多額の赤字が出た場合、繰越期間が短ければ、繰越欠損金の効果を十分に得られないケースがあります。

法人化すれば、赤字の繰越期間は原則10年間となるため、黒字が出た際に相殺でき、節税につながるでしょう。

参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁

賠償範囲を出資の範囲内に制限できる

賠償範囲を出資の範囲内に制限できるため、万が一の際のリスクを減らせることも、法人化するメリットの1つです。

フリーランス(個人事業主)の場合は、経営が悪化した際に個人の債務となるものが諸々あり、個人所有の財産も活用しながら債務の支払いをしなければなりません。

たとえば、以下のようなものです。

  • 仕入先への未払い
  • 金融機関からの借金
  • 滞納した税金 など

一方で、法人化すれば、個人保証が付与された借入を除き責任の範囲が出資額に限定され、個人資産で債務を支払う必要はありません。賠償範囲を制限できるため、リスクを抑えて活動できるでしょう。

決算月を任意で選べる

法人化すれば、決算月を任意で選択できます。自身の忙しくない時期に決算月を設定できるのは、メリットといえるでしょう。

個人事業主における事業年度は1〜12月と決まっており、決算月の自由な設定ができません。

決算の時期には、以下の対応が必要となるため、繁忙期と重複すると負担となるでしょう。

  • 決算書の作成
  • 各種税金の申告・納税
  • 決算書の保存 など

その点、法人化し決算月を選択できれば、事業など自身の繁忙期と重ならない時期に設定可能です。

また、一般的に決算期の会社が多い3月以外にするなど、世間の繁忙期も避けられます。

社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる

法人化することで、経営者本人も社会保険(健康保険・厚生年金)に加入でき、会社員並の手厚い保証を受けられます。

厚生年金保険に加入すれば、将来受け取れる年金額が増加します。扶養の範囲内であれば、親族も加入可能です。さらに、従業員を雇用している場合や、これから雇用する予定がある場合、福利厚生が充実することも魅力といえるでしょう。

ちなみに法人化すれば、経営者1人で事業を営んでいるケースを含め、社会保険の加入が基本的に必須であり、コストも発生します。ただし、保険料は法人の支出となるため、課税金額が減り節税につながるのです。

社会的信用力が高まる

フリーランス(個人事業主)として活動する場合に比べ、法人として活動したほうが社会的信用力が高まります。

法人化するには設立のための資本金が必要で、定款作成や登記などの手間やコストもかかります。登記事項も公に公開されているため、さまざまな面から社会的信用を獲得しやすくなるでしょう。

社会的信用を獲得すれば、補助金や助成金申請がしやすくなったり、金融機関からの融資を受けやすくなったりします。さらに、取引先の幅や取引の規模が拡大する可能性も高まるでしょう。

フリーランスが法人化するデメリット・注意点

フリーランスが法人化する場合、メリットがある一方で以下のデメリットも存在します。

  • 設立するための費用と時間がかかる
  • 会計処理や事務手続きが増える
  • 赤字でも税金を支払わなければならない
  • 社会保険料の負担が大きくなる
  • 登記できる事務所(住所)が必要である

詳しく解説していきます。

設立するための費用と時間がかかる

法人化するためにはコストと各種申請や、手続き時間・手間がかかります。これらは、法人化する際につまずきやすいポイントです。

コストは、最低でも株式会社で約20万円、合同会社で約10万円がかかります。

具体的には、株式会社を設立する場合に以下のコストが発生します。

  • 定款用収入印紙代:40,000円 ※電子定款の場合は不要
  • 定款の謄本手数料:2,000円程度 ※250円/1ページ
  • 定款の認証手数料(公証人に支払う手数料):30,000円~
  • 登録免許税:150,000円もしくは資本金額×0.7%の高い額

合同会社設立の際に発生するコストは、以下のとおりです。

  • 定款用収入印紙代:40,000円 ※電子定款の場合は不要
  • 登録免許税:60,000円もしくは資本金額×0.7%の高い額

手続きの詳細は、後ほど解説します。

参考:印紙税額(2023年4月)|国税庁
参考:会社の定款認証手数料の改定|日本公証人連合会
参考:定款認証の手数料|神戸公証センター
参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

会計処理や事務手続きが増える

法人化すると、設立時だけではなく恒常的に庶務手続きが増え、また難易度が上がることもデメリットの1つです。

フリーランス(個人事業主)の中には、税理士に依頼せず確定申告や経理などの税務処理を自身でおこなう方もいるでしょう。ただ、法人化すると会計処理が複雑になり、事務負担も少なくありません。税理士や公認会計士へ処理を依頼すれば手続きなどの負担は減りますが、その分コストがかかります。

また、交際費として認められる経費の幅が、個人事業主よりも狭くなってしまう点にも注意が必要です。フリーランス(個人事業主)の場合は事業に関する交際費はすべて経費として計上可能ですが、法人化すると経費として計上可能な公債費は基本的に飲食費に限られます。また、資本金が1億円以下の法人の場合は、800万円までしか認められません。

参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁

赤字でも税金を支払わなければならない

フリーランス(個人事業主)の場合、赤字であれば所得税と住民税がかかりません。しかし、法人の場合は赤字でも支払う義務のある税金が存在します。

法人に課される法人住民税は、均等割と法人税割で成り立っています。均等割分の住民税は企業規模により決定されるため、赤字であっても税金の納付が必要です。

具体的な納付金額は自治体により異なります。たとえば、東京都23区内で資本金1000万円以下でかつ従業員50人以下の小規模法人の場合、最低でも年間7万円を納付しなければなりません。

参考:法人住民税とは?計算方法や納付時期を解説|マネーフォワード
参考:均等割額の計算に関する明細書(第6号様式別表4の3)記載の手引|東京都主税局

社会保険料の負担が大きくなる

法人化すると、各種社会保険料の負担が大きくなります。

ちなみに社会保険とは、以下の総称です。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 介護保険

法人であれば、経営者本人を含め加入要件を満たす従業員は、すべて社会保険に加入させなければなりません。本人が負担する保険料の割合と会社が負担する割合は保険により異なり、会社負担割合は以下のとおりです。

  • 健康保険:50%
  • 厚生年金保険:50%
  • 労災保険:100%
  • 雇用保険:業種により異なる
  • 介護保険:50%

法人支出となり課税される金額は減りますが、コストが発生します。

参考:健康保険法(大正十一年法律第七十号)|e-Gov法令検索
参考:労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)|e-Gov法令検索
参考:令和5年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク

登記できる事務所(住所)が必要である

法人を設立する際に必要な登記書類や定款に「本店所在地」を記載しなければならないため、登記できる事務所(住所)が必要です。フリーランス(個人事業主)の場合と異なり、自宅を事務所にすると何かと不都合が生じやすいため、事務所を別に構えなければなりません。

レンタルオフィスなどでも可能ですが、登記不可の物件もあるためご注意ください。ちなみに、必ずしも事務所として実態がある必要はなく、実際に入居せずに住所や電話番号を借りられるバーチャルオフィスでも法人登記は可能です。

フリーランスが法人化するまでの流れ

前述のとおり、フリーランス(個人事業主)から法人化するためには、書類の提出や手続きなどが必要です。

ここからは、以下の項目に分け、フリーランスが法人化するまでの流れについて詳しく解説します。

  • 法人登記の手続き
  • 法人設立後の手続き
  • 個人事業を引き継ぐ手続き
  • 助成金・補助金の申請手続き

抜け漏れが発生しないよう、ご注意ください。

法人登記の手続き

フリーランス(個人事業主)が法人化する際には設立登記が必要であり、さまざまな書類の提出などが求められます。

  • 役員報酬の設定などを含め、定款を作成する
  • 資本金を個人口座に払い込む(振り込む)
  • 法務局で登記申請し、申請完了後の手続きをする

上記の法人手続きについて、事前にどのような手続きや手順が必要かを確認しましょう。

定款を作成する|役員報酬の設定など

まず、会社設立時に定める根本原則が記載された書類である「定款(ていかん)」を作成します。

定款の記載事項には、記載が必須の絶対的記載事項、記載しなければ有効にならない相対的記載事項、記載する必要がない任意的記載事項の3つがあります。

具体的な絶対的記載事項は、以下のとおりです。

  • 会社・事業の目的
  • 商号(会社名)
  • 本社所在地
  • 資本金額(出資財産額)
  • 発起人の氏名または名称と住所
  • 発行可能株式総数

相対的記載事項は、以下をご参照ください。

  • 株式の譲渡制限に関する定め
  • 取締役会や会計参与、監査役などの設置に関する定め
  • 取締役や監査役の任期の短縮、伸長に関する定め
  • 公告の方法 など

任意的記載事項は、たとえば以下が挙げられます。

  • 株主総会の開催に関する定め
  • 役員報酬額などに関する定め
  • 配当金に関する定め​​ など

株式会社の場合は、定款の作成だけでなく、本店所在地と同じ都道府県内の公証役場で認証を受ける必要もあります。認証には会社用の印鑑が必要になるため、作成しておきましょう。

参考:会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説| freee
参考:​個人事業主から法人へ「法人成り(法人化)する際の手続きは?自分でもできる?」|マネーフォワード クラウド会社設立

資本金を個人口座に払い込む(振り込む)

定款の作成と認証が完了したあとに、資本金を発起人の個人口座に振り込みます。この時点ではまだ法人設立ができていないため、法人口座は開設できません。ちなみに発起人とは、会社設立をする際に資本金の出資や定款作成などの手続きをおこなう人です。

1円からでも株式会社の設立はできます。

以下などの要素を総合的に考慮し、資本金の額を決定するとよいでしょう。

  • 半年程度の運転資金をもとに決める
  • 消費税の納税義務が発生しない金額(1000万円)にする
  • 他社の資本金の額を参考する
  • 取引先からの見え方を考え決める
  • 許認可を得る必要があれば、得るために必要な最低資本金額にする など

振り込み後、以下をコピーし保管します。

  • 通帳の表紙
  • 1ページ目
  • 資本金の振り込み金額などが記載されたページ

コピーは登記申請時に必要です。

参考:個人事業主から法人化するには?手続きと必要な準備・費用について解説|freee
参考:会社設立時の資本金はいくらにすべき?金額の決め方、払込方法を解説!|マネーフォワード クラウド会社設立

法務局で登記申請をする・申請完了後の手続きをする

準備が整ったら、法務局で登記申請をおこないます。

法人化する際の企業形態にもよりますが、株式会社の登記申請には以下の書類の提出が必要です。

  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑証明書
  • 資本金の払込みがあったことを証する書面(通帳のコピー)
  • 印鑑届出書
  • 登記すべき事項を記載した書面又は保存したCD-R

受付完了後、法人設立となります。申請が通った場合の連絡はとくにありませんが、書類に不備があるなど申請が通らない場合は連絡が来るため、見逃さないようにご注意ください。登記申請日が法人設立日となるため、特定の日にしたい方は前もって準備しましょう。

登記の完了後、法務局で以下の手続きをおこないます。

  • 印鑑カードの取得
  • 印鑑証明書の交付
  • 登記事項証明書の交付

手続きに関しては、法務局に出向いておこなうほか、郵送でも可能です。

参考:個人事業主から法人化するには?手続きと必要な準備・費用について解説|freee

法人設立後の手続き

法人の設立が終わったからといって、すべての手続きが完了したわけではありません。

設立後もおこなわなければならない手続きもあるため、ご注意ください。

  • 法人名義の銀行口座・クレジットカードを作成する
  • 税務署・都道府県税事務所に届出をする
  • 年金事務所などで社会保険の加入手続きをする

ここからは、上記の法人設立後に必要な手続きについて、詳しく解説します。

法人名義の銀行口座・クレジットカードを作成する

法人の設立が完了したら、法人名義の銀行口座・クレジットカードを作成します。

作成時に必要な書類は金融機関やクレジットカードなどにより異なりますが、たとえば「三井住友ビジネスオーナーズ」の場合は、運転免許証など法人代表者の本人確認資料のみです。中には登記簿謄本や決算書が必要なクレジットカードもあるため、申し込みたい金融機関の必要書類を必ずご確認ください。

法人名義の口座・クレジットカードは、開設する金融機関を選択後、申し込みや必要書類の提出をおこない、審査が完了すれば開設・作成できます。クレジットカードによって、ポイント還元率や新規作成キャンペーンの開催有無・内容が異なるため、比較検討し選ぶのがおすすめです。

税務署・都道府県税事務所に届出をする

以下の書類提出を含めた税務署への届出も必要です。

  • 法人設立届出書
  • 源泉所得税関係の届出書
  • 消費税関係の届出書

また、状況に応じて提出が必要な書類もあります。

  • 青色申告の承認申請書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書
  • 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
  • 申告期限の延長の特例の申請書
  • 事前確定届出給与に関する届出書

さらに、都道府県税事務所や市区町村役場に対しても法人設立届の提出が必要となります。

参考:No.5100 新設法人の届出書類|国税庁
参考:新規に事業を開始された事業主の皆様へ~事業開始に必要な労働関係法令の書類をチェックしてみましょう~|厚生労働省 岩手労働局 労働基準監督署・公共職業安定所

年金事務所などで社会保険の加入手続きをする

法人化をおこなうと、従業員を雇用していない場合も、以下の保険の総称である社会保険の加入が基本的に義務づけられます。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 介護保険

ただし、経営者のみの法人で役員報酬がない(もしくはないに等しい)場合、社会保険に加入しなくても問題ありません。

各保険により、届出をおこなう場所は異なります。

健康保険と厚生年金は、法人化のタイミングから5日以内に、年金事務所への届け出と以下の書類提出が必要です。

  • 健康保険 厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険 厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

従業員を雇用する場合は、労災保険に加入するため、労働基準監督署に「労働保険 保険関係成立届」「労働保険 概算保険料申告書」を提出します。

その後、ハローワークに「雇用保険 適用事業所設置届」「雇用保険 被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

40歳以上の被保険者がいる場合は、介護保険も必要です。ただし、介護保険は健康保険に付随するものであるため、健康保険の手続きをしている場合は原則として手続き不要となります。

参考:新規適用の手続き|日本年金機構
参考:新規に事業を開始された事業主の皆様へ~事業開始に必要な労働関係法令の書類をチェックしてみましょう~|厚生労働省 岩手労働局 労働基準監督署・公共職業安定所

個人事業を引き継ぐ手続き

法人化すれば個人事業主ではなくなるため、廃業手続きをおこない、個人事業の引き継ぎをします。

具体的な引継ぎ事項は以下のとおりです。

  • 個人事業の廃業手続きをする
  • 資産や負債を引き継ぐ・名義変更をする

廃業手続きをおこなわなければ事業が継続されているとみなされ、税務署から個人事業分の納税を求められる恐れがあります。

個人事業を引き継ぐ手続きについて詳細を見ていきましょう。

個人事業の廃業手続きをする

法人を設立したら、個人事業の廃業手続きを実施します。

廃業から1か月以内に税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出し、手続きをしなければなりません。

フリーランス(個人事業主)のときに青色申告だった場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、従業員を雇用していた場合は「給与支払事務所等の廃止届出書」の提出も必要です。

個人事業を廃業しても、最終年度分の確定申告は求められます。

また、法人化1年目は前述の個人事業主の事業所得と、法人設立後の役員報酬における給与所得の2つの申告をしなければなりません。

廃業手続きと確定申告の実施を忘れないように、留意しましょう。廃業手続きを忘れたとしても罰則はありませんが、前述したとおり個人事業分の納税が求められるケースがあります。

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

資産や負債を引き継ぐ・名義変更をする

個人事業の資産や負債の引継ぎ手続きを自分でおこなう必要もあります。資産の移行方法は以下の3種類、負債の移行方法は「重畳的債務引受」「免責的債務引受」の2種類があります。

  • 売買契約
  • 現物出資
  • 賃貸借契約

負債の移行方法の重畳的債務引受とは、債務の引受人が元の債務者と連帯して同等の債務を負う方法のことです。

一方で免責的債務引受とは、引受人が債務を負い、元の債務者の返済義務が免責される方法を指します。金融機関から借り入れを受けている場合は、どのように債務引受をするかを調整しておきましょう。

あわせて、銀行口座や事務所の賃貸借契約書の名義変更もしなければなりません。

法人化した場合は、取引先との基本契約書を結びなおすケースが一般的です。取引先に法人化した旨を伝えると共に、再契約をおこないましょう。

助成金・補助金の申請手続き

必ずしもおこなわなければならないことではありませんが、補助金・助成金を活用するための手続きもおすすめです。法人設立の手続きはもちろん、オフィス(本店所在地)の準備や継続利用の家賃、備品購入などにはコストが発生します。

金融機関からの借入は、返済する義務があり、利息も加算されます。自己資金で賄う方法もありますが、資金が多ければ心理的負担も軽減できるでしょう。

以下の補助金・助成金などは、返済する義務がありません。

  • 小規模事業者持続化補助金…小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する補助金 ※詳細は公式サイトをご確認ください。
  • IT導入補助金…経営課題の解決に向けITツールの導入を支援する補助金 ※詳細は公式サイトをご確認ください。
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金…中小企業・小規模事業者が革新的なサービス・試作品の開発や生産プロセスの改善をおこなうための設備投資などを支援する補助金 ※詳細は公式サイトをご確認ください。

所属する自治体やタイミングなどにより利用できる補助金・助成金は異なるため、一度検索してみることをおすすめします。

フリーランスが法人化するときの相談窓口

ここまで解説してきたとおり、フリーランス(個人事業主)から法人化するには、多くの手続きや書類の作成・提出が求められます。慣れていない方にとっては、負担が大きく大変でしょう。

法人設立に関するすべての疑問の解決や不安の解消は難しいですが、一部相談できるところも多くあります。

  • 法務局…会社登記に関する相談が可能
  • 公証役場の公証人…定款の内容に関する相談が可能
  • 税務署…法人設立届出書、青色申告の承認申請書などの記載や作成方法に関する相談が可能
  • 商工会議所・商工会…創業支援や補助金・助成金申請、確定申告の作成に関する支援を受けることが可能
  • 専門家…司法書士は設立登記申請、社労士は社会保険の申請、税理士は税金関係の届け出に関する相談が可能

疑問や不安、つまずいた課題に応じて、上記を使い分けるとよいでしょう。

法人化後にフリーランス(個人事業主)へ戻ることは可能

所得や売上の拡大に伴い法人化しても、その後思うような結果が出続けるとは限りません。法人化にはメリットがある一方、デメリットも存在するため、本当に法人化してしまって大丈夫だろうかと不安を抱く方もいることでしょう。

しかし、法人の継続が困難な場合はフリーランス(個人事業主)にも戻れるため、ご安心ください。

フリーランス(個人事業主)に戻る際は、会社を解散及び清算(完全に消滅させる)するか、会社を休眠させるかのいずれかの手続きが必要です。会社を解散・清算する場合は登記手続きが必要となり、コストが発生します。

また、借入金などがある場合は、返済方法の検討もしなければなりません。

休眠手続きはほとんどコストがかかりませんが、決算申告や登記などの手続きは継続して求められます。

なお、法人で発生した赤字は個人に繰り越せないため、ご注意ください。

法人からフリーランスに戻ると、あまりよい印象を持たれず、取引に影響が出る可能性も否定できません。

まとめ

本記事では、フリーランスが法人化するのに最適なタイミングやメリット・デメリット、法人化するまでの流れ、相談窓口などについて解説しました。

法人化のタイミングは、事業所得が800万円を超えたときや、売上高が1000万円を超えたときが目安の1つとなります。法人化すれば、以下のようなメリットを得られるでしょう。

  • 節税につながる
  • 賠償範囲を出資の範囲内に制限できる
  • 社会的信用力が高まる など

一方で、日々の事務負担や会計処理の増加、赤字でも納付義務のある税金の存在、設立のための手間やコストといったデメリットもあります。

いずれにせよ、法人化して思うような結果が出なかった場合はフリーランス(個人事業主)に戻るのも可能なため、悩んでいるのであれば一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

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