フリーランスの将来の年金額はいくら?年金を増やすおすすめの方法について紹介
フリーランスと会社員とでは、加入する年金制度が異なるため、年金額にも差が生じます。
フリーランスは会社員よりも年金額が少ないという印象を持っている方も多いと思いますが、実際にフリーランスは、将来どの程度の年金額となるのでしょうか。
本記事では、フリーランスの将来の年金額について、具体的な金額を含めてご紹介していきます。また、年金を増やすおすすめの方法についても紹介するので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
フリーランスになったら厚生年金から国民年金に切り替える必要あり
会社を辞めフリーランスとなる場合は、会社員時代に加入していた厚生年金から国民年金に切り替える必要があります。厚生年金は会社員と公務員が加入対象であるため、フリーランスになると加入できなくなるのです。
国民年金に切り替える際は、お住まいの市区町村役場で手続きをおこないましょう。切り替えの際には、以下のようなものが必要となります。
- 退職を証明できる書類(退職証明書、離職票など)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 年金手帳
- 印鑑
提出期限は退職日の翌日から14日以内となっているため、退職後はなるべく早く切り替えの手続きをおこなうとよいでしょう。切り替えを忘れてしまったとしても、保険料の納付期限から2年以内であれば、後から保険料を納めることは可能です。
なお、国民年金への切り替えは、2022年より「マイナポータル」を利用した電子申請が可能となっています。自宅にいながら24時間届け出ができるため、市区町村役場へ行く時間があまりない方におすすめです。
会社員時代の厚生年金のままにしておくのは可能?
結論からいうと、厚生年金には「任意継続制度」がないため、フリーランスが厚生年金に加入し続けることはできません。必ず国民年金に切り替える必要があります。
ちなみに、厚生年金と同様に退職時に手続きが必要となる「健康保険」に関しては、任意継続制度があるため、一定の条件を満たしていれば退職後2年間まで継続加入が可能です。
将来のフリーランスの年金はいくら?
それでは早速、フリーランスが将来年金をどの程度もらえるのか、具体的に見ていきましょう。
国民年金の保険料は全ての人に対して等しく、2022年度の国民年金の満額は777,800円です。国民年金を満額納めることで、65歳より年間777,800円の年金を受け取ることができます。
ただし、20歳から60歳までの40年間、年金保険料を納め続けなければ、満額支給とはなりません。厚生年金から途中で国民年金に切り替えた場合などは、国民年金の支給額が満額に届かない場合がほとんどでしょう。
一方で厚生年金の場合は、保険料は収入によって増減し、支給額もそれに応じたものとなります。
「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度における老齢給付受給者への厚生年金(第1号)平均支給額(月額)は145,665円、国民年金平均支給額(月額)は56,479円となっています。フリーランスの年金額は、会社員時代よりは少なくなってしまうと考えるべきでしょう。
老後の生活費はこれくらいかかる
老後は基本的に年金が収入源となるため、老後の生活費がいくらかかるのかは気になるところでしょう。
公益財団法人生命保険文化センターが令和元年に実施した「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人の老後生活に必要となる最低日常生活費として、20万~25万円未満と回答した方が最も多くて29.4%、平均額は22.1万円でした。
次に、実際の老後生活費についても見ていきます。総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)」によると、2021年の2人以上の世帯の消費支出は、60~69歳の世帯で288,312円、70歳以上の世帯で226,383円でした。
実際の消費支出は、調査によって得られた老後生活に必要と考えられる最低日常生活費の平均をさらに上回っており、この2つの結果を踏まえると、夫婦2人の場合は月30万~40万円ほどでようやくそれなりにゆとりのある生活を送ることができるといえます。仮に夫婦がどちらも国民年金だった場合、両者の年金額を合計しても11万円程度にしかならないため、生活費の平均額とは大きな差がついてしまうのが現実です。
参考:公益財団法人生命保険文化センター 生活保障に関する調査
フリーランスは年金を70歳まで繰り下げても
老後の生活費に関する調査結果から、国民年金の受給額で生活を送っていくには、なかなか厳しいことがわかりました。
少しでも受給額を増やすために、繰り下げ受給を検討する方も多いのではないでしょうか。
通常は65歳から受給する年金を70歳まで繰り下げることで、1ヶ月あたりの受給額を増額させることは確かに可能です。具体的には、繰り下げによって1ヶ月あたり0.7%増額されていくため、70歳まで繰り下げた場合は12ヶ月×5年×0.7%で42%の増額となります。
しかし、42%増額したとしても、受給額は月9万円ほどにしかならないため、過度な期待は禁物です。
繰り下げだけでは足りない部分については、後述する「年金を増やす方法」を併用するとよいでしょう。
フリーランスが年金を増やすおすすめの方法について紹介
最後に、フリーランスが年金を増やすためにおすすめしたい方法を紹介します。
いくつかの方法があるため、それぞれの方法についてしっかりと内容を把握してから実践していくようにしましょう。
年金を増やすためにおすすめな方法は、以下の5つです。
- 小規模企業共済への加入
- 国民年金基金への加入
- iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入
- 年金受給を66歳以降に繰り下げる
- 付加年金を納付する
それぞれ詳しく解説します。
小規模企業共済への加入
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員を対象とした小規模企業共済制度で、経営者の退職金制度ともいえるものです。個人事業主も加入対象に含まれているため、フリーランスの方も加入できます。
月々の掛金は1,000円から70,000円まで500円単位で自由に設定することができ、退職・廃業時には掛金に応じた共済金を受け取ることが可能です。
また、掛金は増額・減額(※減額には一定の要件が必要)もできるため、その時々の状況に応じて金額を設定できます。
老後の資金源となるのはもちろんのこと、掛金は全額所得控除となるため、高い節税効果も期待できます。加入する際には、以下の種類が必要です。
- 確定申告書の控え
- 契約申込書
- 預金口座振替申出書
事業を始めたばかりでまだ確定申告をおこなっていない場合は、確定申告書の代わりに開業届の控えが必要となります。
また、確定申告書および開業届の控えには税務署の受付印が必要なため、電子申告で確定申告をおこなった場合は、書類に加えて電子申告の受付確認として「メール詳細」をご提示ください。
契約申込書と預金口座振替申出書については、「小規模企業共済公式サイト」よりダウンロード可能です。
加入手続きは、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体、または金融機関の窓口にておこなえます。書類の受付は窓口のみに限られており、郵送では受けつけていないため注意しましょう。
参考:中小機構 小規模企業共済
国民年金基金への加入
自営業・フリーランス向けの年金制度として「国民年金基金」があります。国民年金基金は、国民年金に上乗せして加入できる公的な年金制度です。
加入対象は以下の通りです。
20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者の方※国民年金保険料を納付している方60歳以上65歳未満の方や海外居住者で国民年金に任意加入している方(たとえば学生・主婦であっても、上記の要件を満たせば加入できます。) |
国民年金基金には7つのプランがあり、1口目は終身年金A型かB型かを選択、2口目以降は終身年金の2種のほか確定年金5種を含めた全7種のプランから自由に選ぶことができます。各プランの特徴は以下の通りです。
プラン名 | 基本年金月額 | 保証期間 | 支給開始時期 |
A型 | 1~2万円 | 15年間 | 65歳から |
B型 | 1~2万円 | なし | 65歳から |
Ⅰ型 | 5千円~1万円 | 15年間 | 65歳から |
Ⅱ型 | 5千円~1万円 | 10年間 | 65歳から |
Ⅲ型 | 5千円~1万円 | 15年間 | 60歳から |
Ⅳ型 | 5千円~1万円 | 10年間 | 60歳から |
Ⅴ型 | 5千円~1万円 | 5年間 | 60歳から |
掛金の上限は68,000円となっており、保証期間があるプランについては、年金受給前から保証期間中に加入者が亡くなった場合に、掛金納付期間に応じた遺族一時金が支給されます。
また国民年金基金も、小規模企業共済と同様に掛金が全額控除されるほか、受け取る年金も公的年金等控除の対象となります。
参考:全国国民年金基金
iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている、私的年金制度です。
掛金は65歳まで拠出することができ、拠出した掛金は自身で運用していくこととなります。掛金と運用によって発生した利益は、60歳以降に老齢給付金として受け取ることが可能です。
掛金は全額所得控除されるため、所得税および住民税の節税効果も期待できます。
iDeCoと似たものに定期預金や投資信託などがありますが、iDeCoはこれら2つとは違い、運用によって発生した利益までも非課税となります。
また、掛金は5,000円〜拠出限度額の範囲内であれば1,000円単位で設定することが可能です。拠出限度額は加入資格によって異なり、フリーランスは第1号被保険者に該当するため、月額68,000円が限度額となります。
ただし、iDeCoは誰もが加入できるわけではありません。iDeCoの加入条件は以下の通りです。
- 20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランスなど
- 厚生年金の被保険者
- 厚生年金の被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
- 国民年金に任意で加入した方
なお1の条件には加入対象とならない例外があり、農業者年金の被保険者、または国民年金の保険料納付を名除されている方は、加入対象外となります。
加入の申し出は、加入申出書を国民年金基金連合会に提出することで受理されます。加入申請書は運営管理機関一覧に掲載されている金融機関から入手可能です。
金融機関は1社しか選ぶことができず、金融機関によって運用商品や手数料などが異なるため、各金融機関を比較検討しながら選ぶとよいでしょう。
また、iDeCoの受給開始年齢は、加入期間に応じて決定されます。具体的には以下の通りです。
加入期間 | 受給開始年齢 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1月以上2年未満 | 65歳 |
iDeCoの年金資産を受け取る際は「一時金として一括で受け取る」「年金として受け取る」「一時金と年金を組み合わせて受け取る」の3つの方法があります。条件はなく自由に選択できるため、自身に合った受け取り方を選択するとよいでしょう。
参考:iDeCo公式サイト
年金受給を66歳以降に繰り下げる
通常65歳から年金が受給されますが、年金受給を66歳以降に繰り下げることで、年金を増額することが可能です。繰り下げすることにより、1ヶ月あたり0.7%増額されます。
ただし、年金受給を繰り下げる際には、いくつかの注意点があります。1つ目は、年金額の増額に応じて、介護保険料や税金も増えてしまう点です。
そのため、年金額自体は増額したとしても、手取り額は思ったほど増えない可能性が高いでしょう。
さらに、繰り下げの手続き後に取り消しや修正をすることはできないため、何歳まで繰り下げるかは慎重に決める必要があります。
また、国民年金とともに付加年金も受け取る場合は、付加年金も繰り下げとなり、国民年金と同率で増額されます。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター 老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい
付加年金を納付する
国民年金には「付加年金」という制度があります。付加年金は、フリーランスの方などが加入する国民年金の第1号被保険者を対象とした制度です。国民年金の保険料に加えて、付加保険料を納めることができます。
なお、農業者年金に加入している被保険者は、付加保険料納付該当届の提出が必要なため、注意しましょう。付加保険料は毎月400円で、年金受給時には200円×付加保険料を納めた月数分の年金を受け取ることが可能です。
また、付加年金の納付は途中でやめることもできます。納付をやめる場合は、付加保険料納付辞退申出書の提出が必要です。
まとめ
本記事では、フリーランスの将来の年金額について、具体的な年金額、また年金を増やすおすすめの方法を紹介しました。
国民年金の年金額は厚生年金と比べると明確な差があるため、老後の生活費にはやや心もとないのが現実です。
幸いにも年金を増やす方法自体は豊富なため、老後の不安を軽減するためにも、この記事を参考に、年金額を少しでも増やせるよう検討することをおすすめします。
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