元フリーランスエンジニアが語る法人設立前に少し考えておくこと

はじめに

はじめまして。法人設立をして現在は社長ですが、元フリーランスのエンジニアです。
約1年前に法人設立をしてなんとか1期目を乗り越え2期目に入りました。フリーランスのエンジニアについては本当に優秀な方に記事をお任せして、身近なようで少し遠い法人設立のことを書いていきたいと思います。


執筆者:元フリーランスエンジニア KN

東京のWeb広告代理店にて営業管理職を経験し上場メンバーとしてストックオプションで左団扇。その後、大学時代に情報工学を専攻していた経緯もありITの世界に裸一貫で飛び込む。
2012年に、当時は珍しかったフリーランスに転身。専門はインフラ、ネットワーク、クラウド、BCP策定、ISMS導入、内部統制策定など。現在はPMを行いながら自身の法人を立ち上げ、自社プロダクトを企画・制作中。

実は必要に迫られただけ

ある程度の報酬額になってくるとマイクロ法人の方が税金が抑えられるなんて話がちょこちょこと耳にする機会が増えてきます。ほほぅ、法人化した方が収入が増えるのか、なんて気になる方もいるかもしれません。得られる収入を最大化するために法人化、なんて考えで法人化してしまうと、
色々と沼にはまるかもしれないので予め知っておいていただきたいことを書いていこうかなと思います。

ちなみに、私が法人化した理由は税金が抑えられるなどの理由ではなく、新規取引先がプライム上場企業となってしまう関係で個人事業主ではいられなくなったためです。過去にお世話になった企業から仕事依頼があったのですが、個人事業主では購買口座が作れなかったため、やむを得ず法人化することになりました。案件の話などは進んでいたのでいきなり4か月後には法人化、という急な話でもありました。

元々、法人化をする予定はなかったのですが、顧問税理士にも年額報酬的に法人化した方が有利だ、というアドバイスもあり、じゃあやってみるか、という流れです。
そのため、収入や利益の最大化と理由は後からついてきた形になります。法人を作るだけなら非常に簡単です。自分であれこれすることも出来ますが、行政書士の先生を利用すると確実です。法人登記の書類は、行政書士さんの独占業務になるため税理士さんにお願いしても対応できません。

税理士さんに相談すると、行政書士さんを紹介してくれたりします。行政書士さんにお支払いする費用と、法人設立のための費用、印鑑の作成費用。あと資本金。合同会社設立であれば資本金1円で登記するなら全部で20万円程度で作れてしまいます。が、私が失敗しかけた事例の話を書きましょう。

私の失敗しかけた事例

法人銀行口座が作れない

法人口座を簡単に作れませんでした。
理由はいくつかあったのですが、最大の理由がバーチャルオフィスだったからというシンプルなものでした。必要にせまられて法人化することになったため、事務所の費用などが無駄と考えバーチャルオフィスを選択したのですが、昨今の社会的な状況からバーチャルオフィスの法人の信用度がかなり低く法人口座が簡単につくれません。ネットバンクなどでも決済用の法人口座も作ることができるそうですが、これは最後の手段でした。もし、何かの仕事を受けて融資が必要になった場合、ネットバンクからは簡単に融資が受けられません。

純粋に決済用と割り切れるのであればネットバンクの口座でもよかったのかもしれませんが、法人化して事業を営む以上はやはり社員を雇い、売上を追求しなければならなくなります。その際に、融資を受けられない銀行口座は非常にデメリットになると考えていました。

いくつか銀行を回りましたが、いわゆる都市銀行では法人銀行口座の開設は絶望的でした。ですが、これは事前に想定できていました。そこで、信用金庫に行って口座を作ろうとしたところ、想定外の事態が起こりました。その信用金庫は、バーチャルオフィスで起業した法人の口座を作った事例が1例もなかったのです。かなり色々な書類や写真を提出し、面談があり、長い審査を受けようやく銀行口座を開設できました。信用金庫であればバーチャルオフィスでも簡単に法人口座が作れるなんてWebの記事がたくさんありますが、そうは簡単にいきませんでした。このあたりは実際にやってみた経験の有無でしょうか。

資本金が少なすぎた

法人化した直後は、スリーシェイク社との法人契約だったため、報酬の支払いサイトは25日でしたが、取引が始まったプライム上場企業は60日という支払いサイトでした。(現在は、交渉の末45日)

つまり、新しい会社からの入金が2ヶ月ありません。あまり計画的ではない法人化だったため、なんとなくの10万円の資本金で設立したのですが、この2ヶ月間の無入金期間の乗り越える資金が溜まる前に、新しい取引が始まってしまいました。

つまり、このまま推移すると数ヶ月後には確実に黒字倒産する、ということが見える形です。足りなかったのは数万円だったのですが、この数万円で経営資金がショートして倒産してしまう。そこで、法人設立後、わずか数ヶ月で法人の資本増資を行うことになりました。
どうせならと少し多く資本増資を行ったのですが、増資に関わる申請等の費用、これが余計な出費となりました。確かに合同会社であればあまり資本金を考えなくて設立はできましたが、あまりに少なすぎてもダメなんだなぁという教訓です。普通であれば会社運転資金は6ヶ月分を資本金にする、なんてことも書いてありましたが、IT系にいる人間はどうも合理的すぎてこのあたりを軽視してしまうようです。

思っているより社会保険費用は高い

この記事を読んでいる方のほとんどは、国民健康保険年100万円組だと思います。
病院なんて行かないのに、と思いながら私も払っていましたが、法人化後のことを正直に書きます。

法人化すると目の当たりにしますがこのあたりの負担は重いです。正確に書くと個人の負担は軽くなりますが、法人負担分が重いのです。毎月支払う費用は、フリーランス時代の国民健康保険+国民年金の1.5倍程度は覚悟してください。平たく書くと、国民健康保険年100万円組が実際に得ている年収を役員報酬に換算すると、健康保険と厚生年金のラインがそのあたりになるということです。ただし、厚生年金となるので長い目で見れば国民年金より有利になるとは思います。つまり毎月支払う費用を考えると、役員報酬をどうするかについてはキチンと考えねばなりません。会社に残すのか、個人に残すのか、このあたりは税理さんと相談してみると良いと思います。

おわりに

実は最近、色々な場所に顔を出すことが多くなり、「代表」と呼ばれる機会が増えました。合同会社は代表社員という肩書になり、実は「社長」という役職は存在しないのです。フリーランス時代にはなかった、どこか重い責任を感じることがあります。また、法人化したとこで一緒に働きたいなんてことを言ってくれる変わり者が何人かでてきてしまったので、近い未来で一緒に働くことになるんだろうな、と。そんなことを考えながら、今日を楽しんでいます。

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