フリーランスの経費ガイド|経費にできるもの一覧【2025年最新】
2025年11月17日
フリーランスとして活動する上で、避けては通れないのが「経費」の管理と確定申告です。特に、事業で得た収入から経費を差し引くことで課税対象となる所得を抑え、結果的に税金の負担を軽減する「節税」において、経費の知識は不可欠な武器となります。しかし、「どこまでが経費として認められるのか」という線引きに悩み、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フリーランス、特にITエンジニアの方々に向けて、経費にできるものとできないものを具体的な勘定科目と共に徹底解説します。家事按分の計算方法から領収書の正しい保管方法、さらにはエンジニア特有の経費事例まで、この記事一本でフリーランスの経費に関するあらゆる疑問が解消できるよう網羅的にご紹介。正しい知識を身につけ、自信を持って確定申告に臨みましょう。
目次
【一覧表】フリーランスが経費にできるもの・できないものの具体例
まず結論として、事業を運営するために直接かかった費用が経費となります。一方で、事業とは関係のないプライベートな支出は経費にできません。ここでは、具体的にどのようなものが経費に該当するのか、そして間違いやすい「経費にできないもの」を一覧表で分かりやすく解説します。
経費にできるものの勘定項目別一覧
以下の表は、フリーランスが経費として計上する可能性のある主な支出を勘定項目ごとにまとめたものです。ご自身の支出がどれに該当するのか確認してみましょう。

間違えやすい!経費にできないものの代表例
一方で、以下のような支出は原則として経費に計上できないものです。事業のための支出と個人の支出は明確に区別しなくてはなりません。
- 個人のための支出:
- 生計を同一にする家族との飲食代
- 趣味や娯楽のための費用(個人的な旅行、映画鑑賞など)
- 事業に直接関係のない衣服代(プライベート兼用のスーツや洋服など)
- 個人の健康管理や医療に関する費用(人間ドック、医療費、生命保険料など)
- 税金・社会保険料:
- 所得税、住民税
- 国民健康保険料、国民年金保険料
- 罰金、科料、過料
- その他:
- 事業主自身の給与
- 生計を同一にする配偶者や親族への給与(青色事業専従者給与の届出がない場合)
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フリーランスが経費にできるか判断する3つの基準

「この支出は経費になるのだろうか?」と迷った際に、立ち返るべき3つの基本的な判断基準が存在します。この基準を理解しておくことで、多くのケースで自己判断が可能になります。
基準1:事業に直接関連しているか?(事業関連性)
最も重要な基準は、その支出があなたの事業に直接関連しているかどうかです。例えば、Webデザイナーがデザインの参考にするために購入した美術書は経費になりますが、趣味で読んでいる小説は経費になりません。常に「これは自分のビジネスにとって必要な支出か?」と自問自答する癖をつけることが大切です。
基準2:売上につながるか?(必要性)
事業に関連しているだけでなく、その支出が将来的な売上に貢献するものであるかどうかも問われます。例えば、新規顧客獲得のための広告宣伝費や、スキルアップのためのセミナー参加費は、将来の売上につながる投資と見なされるため、経費として認められます。支出の目的を明確に説明できることが重要となるでしょう。
基準3:客観的に証明できるか?(証拠)
税務調査などで問われた際に、その支出が事業のためであったことを客観的に証明できる必要があります。そのための最も強力な証拠が「領収書」や「レシート」です。いつ、どこで、誰に、何のために、いくら支払ったのかが明確にわかる証拠書類を必ず保管しておきましょう。
【ITエンジニア特有】これは経費にできる?ケーススタディ
ここからは、多くのIT・Web系フリーランスエンジニアが悩みがちな特有の経費について、具体的なケーススタディで解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら確認してください。
高スペックPCや周辺機器の購入費用
結論として、業務で使用するPCやモニター、キーボードなどの購入費用は経費に計上できます。注意点はその金額です。購入金額が10万円未満の場合は「消耗品費」として一括でその年の経費にできます。しかし、10万円以上の場合は「固定資産」として扱われ、数年間にわたって分割して経費計上する「減価償却」という手続きが必要になります。
例えば、40万円のPCを購入した場合、法定耐用年数である4年間にわたり、毎年10万円ずつ経費として計上していくイメージです。これにより、単年での利益の圧迫を防ぎつつ、適切に経費化できます。
生成AI・開発ツールのサブスクリプション料金
ChatGPT PlusやGitHub Copilotといった生成AIツール、JetBrains製品などのIDE(統合開発環境)、Adobe Creative Cloudなどのデザインツール、その他業務効率化ツールの月額・年額利用料は、全額経費として計上可能です。勘定項目は「通信費」や「支払手数料」が一般的でしょう。業務に不可欠なツールへの投資は、節税と生産性向上の両面から非常に有効です。
技術書やオンライン講座の受講費用
スキルアップのための技術書や専門書の購入費用、Udemyなどのオンライン学習プラットフォームでの講座購入費用、技術セミナーへの参加費なども、事業に必要な知識や技術を得るための支出として「新聞図書費」や「研修費」として経費計上できます。変化の速いIT業界でフリーランスとして活躍し続けるためには、自己投資が不可欠であり、税制上もそれが後押しされている形です。
コワーキングスペースやカフェでの作業代
自宅以外で仕事をする際のコワーキングスペースの利用料は、全額経費にできます。また、打ち合わせ場所としてカフェを利用した場合の飲食代は「会議費」として計上可能です。ただし、一人で作業するためにカフェを利用した場合の飲食代は、税務署の判断が分かれるグレーゾーンです。食事目的と見なされないよう、あくまで場所代としての常識的な範囲の金額に留め、作業内容を記録しておくなどの工夫が求められます。
自宅兼事務所は「家事按分」で賢く経費計上!計算方法を解説
フリーランスの多くは自宅を事務所として利用しています。その場合、家賃や水道光熱費といったプライベートと事業の両方にかかる費用を、事業で使った分だけ経費にする「家事按分(かじあんぶん)」という考え方が重要です。
家事按分とは?フリーランスなら必須の知識
家事按分とは、家賃や水道光熱費、通信費などのように、生活費(家事費)と事業費が混在している支出(家事関連費)を、合理的な基準に基づいて事業用の経費とプライベート用の支出に分ける会計上のルールのことです。これにより、自宅で仕事をするフリーランスでも、生活費の一部を適切に経費計上できます。
家賃の按分計算例
家賃を家事按分する際は、「事業で使用している面積」や「事業で使用している時間」を基準に計算するのが一般的です。面積で計算する方が客観的で説明しやすいため、おすすめです。

水道光熱費・通信費の按分計算例
水道光熱費や通信費は、業務時間を目安に按分するのが合理的です。

この事業使用割合は、一度合理的な基準を決めたら、事業内容が大きく変わらない限りは継続して使用するのが一般的です。自身が税務署に説明できる、明確な根拠を持つことが何よりも重要となります。
経費計上に必須!領収書・レシートの正しい扱い方
経費を計上するためには、その支出を証明する領収書やレシートが不可欠です。これらの書類の正しい取り扱い方を理解し、確定申告や万が一の税務調査に備えましょう。
領収書の保管期間と方法【電子帳簿保存法も解説】
受け取った領収書やレシートは、法律で保管期間が定められています。
- 青色申告の場合: 原則として7年間
- 白色申告の場合: 原則として5年間
保管方法は、紙のままファイリングする方法と、スキャナやスマートフォンで撮影して電子データとして保存する方法があります。2022年1月に改正された「電子帳簿保存法」により、一定の要件を満たせば電子データでの保存が正式に認められ、紙の原本を破棄できるようになりました。ペーパーレス化を進めたい方は、対応する会計ソフトの導入を検討すると良いでしょう。
領収書を紛失・もらい忘れた場合の対処法
領収書を紛失してしまっても、諦める必要はありません。出金伝票を自分で作成し、取引年月日、支払い先、内容、金額などを記録しておくことで、領収書の代わりとして認められる場合があります。また、冠婚葬祭のご祝儀やお香典など、領収書が発行されない支出についても同様に出金伝票が有効です。
レシートやクレジットカード明細は有効か?
「宛名がないからレシートではダメなのでは?」と心配する方もいますが、全く問題ありません。税法上は「取引年月日」「金額」「支払い内容」「支払い先の名称」が記載されていれば証憑として認められるため、レシートでも経費計上は可能です。
同様に、クレジットカードの利用明細や銀行の振込明細も、他の書類と合わせて保管しておくことで、支出の重要な証明資料となります。事業用のクレジットカードを一枚作っておくと、経費管理が非常に楽になるためおすすめです。
関連記事:フリーランス向け|確定申告に必要な帳簿の付け方を初心者でもわかりやすく解説!
効率的な経費管理で節税効果を最大化するツール
日々の経費管理を手作業やエクセルで行うのは、手間がかかる上にミスも起こりがちです。ここでは、フリーランスの経費管理を劇的に効率化するツールをご紹介します。
なぜ今、会計ソフトが必須なのか?
現代のフリーランスにとって、クラウド会計ソフトの利用はもはや必須と言えるでしょう。会計ソフトを導入することで、以下のような多くのメリットが得られます。
- 入力作業の自動化: 銀行口座やクレジットカードを連携すれば、取引明細を自動で取り込み、AIが勘定項目を推測してくれます。
- 確定申告書類の自動作成: 日々の取引を入力していくだけで、青色申告決算書や確定申告書Bといった複雑な書類が自動で作成されます。
- 法改正への自動対応: 電子帳簿保存法やインボイス制度など、頻繁に行われる法改正にもアップデートで自動対応してくれるため安心です。
- 経営状況の可視化: リアルタイムで売上や経費の状況をグラフなどで確認でき、経営判断に役立ちます。
フリーランスにおすすめの会計ソフト3選
日本国内では、主に以下の3つのクラウド会計ソフトが多くのフリーランスに利用されています。

スマホで完結!経費管理に役立つアプリ
多くの会計ソフトは、スマートフォンアプリも提供しています。スマホアプリを使えば、レシートを撮影するだけで日付や金額を自動で読み取り、仕訳まで完了できます。移動中や外出先でも手軽に経費登録ができるため、領収書の溜め込みや入力漏れを防ぐのに非常に役立ちます。
関連記事:【2025年最新】フリーランスにおすすめの会計ソフトを紹介!
フリーランスの経費に関するよくある質問(FAQ)
最後に、フリーランスの方々から寄せられる経費に関するよくある質問とその回答をまとめました。
Q. 経費の上限金額はありますか?
A. 経費に上限金額はありません。事業を行う上で必要であったと合理的に説明できる限り、いくらでも計上することが可能です。ただし、売上に対して経費があまりにも多すぎると、税務署から不審に思われる可能性はあります。常識の範囲内で、事業との関連性を明確にすることが重要です。
Q. 開業前の費用は経費にできますか?
A. 経費にできます。開業前に事業の準備のために支払った費用(PC購入費、打ち合わせ費用、書籍代など)は、「開業費」という勘定項目で資産として計上し、任意の年に経費化することができます(任意償却)。領収書は必ず保管しておきましょう。
Q. 青色申告と白色申告で経費の範囲は変わりますか?
A. 経費として認められる範囲(何が経費になるか)は、青色申告でも白色申告でも同じです。ただし、青色申告では、生計を同一にする家族への給与を全額経費にできる「青色事業専従者給与」や、赤字を翌年以降3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」など、経費以外の面で大きな税制上の優遇措置があります。フリーランスとして活動するなら、節税メリットの大きい青色申告を強くおすすめします。
関連記事:フリーランスの青色申告ガイド|メリットや手続きの方法を徹底解説
まとめ:正しい経費知識を身につけ、フリーランスとしての事業を加速させよう
本記事では、フリーランスの経費について、計上できるもの・できないものの具体的な一覧から、エンジニア特有の事例、家事按分の計算、領収書の管理方法まで、網羅的に解説しました。
正しい経費の知識は、不要な税金を納めることを防ぎ、手元資金を増やして事業を安定させるための強力な武器です。日々の支出が事業への投資であることを意識し、領収書を確実に保管する習慣をつけましょう。そして、会計ソフトなどの便利なツールを積極的に活用することで、経理作業に費やす時間を最小限に抑え、あなたが最も価値を発揮できる本業に集中することが可能になります。
この記事が、あなたのフリーランスとしての活動をより豊かで実りあるものにする一助となれば幸いです。
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