個人事業主が業務委託で得た報酬の税金は?支払調書は出る?

個人事業主になると、会社員とは異なり1から自分で確定申告をおこない、納税する必要があります。

そのため、個人事業主として業務委託契約で働くことを検討するなかで、「収入に対してどのくらいの税金が引かれるのか」「どのような手続きが必要なのか」と疑問を抱えている方も多いでしょう。

業務委託で個人事業主は、所得税や住民税、さらに業種や売上額によっては個人事業税、消費税を支払わなければなりません。

本記事では、個人事業主が業務委託で働く際に発生する税金について解説します。それぞれの税金の計算方法や、確定申告などについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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業務委託契約とは

業務委託契約とは、企業や個人の委託者が受託者に特定の業務を委託する際に交わす契約のことです。業務委託契約では依頼した業務に対する報酬の内容や、納品物がある場合はその期限などを定めます。

業務委託契約は、法律上で明確に定められている用語ではありません。したがって法律上の定義では、業務委託契約は委任契約と請負契約に分けられます。

請負とは、民法第632条で「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定められている契約です。

一方で委任は、民法第643条にて「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」とされています。

出典:民法|e-Gov法令検索

委任契約(準委任契約)は仕事の進行に対して報酬が発生

委任契約(準委託契約)は、仕事の進行について報酬が発生する契約のことです。例として、訴訟のときに弁護士をつけたり、税理士に税務顧問を依頼したりするケースが挙げられるでしょう。

委任契約では、行為自体が契約内容になるので、訴訟の結果にかかわらず報酬が支払われます。ただし、行為を遂行する際には民法第644条の注意義務にのっとることが必要です。

参考:民法|e-Gov法令検索

業務内容が法律行為でなければ準委任契約

委任契約と準委任契約の違いは、仕事の内容が法律業務であるかどうかです。弁護士や税理士、司法書士などの法律業務に関わる業務は、委任契約になります。

一方で、法律行為以外の業務については準委任契約に該当します。したがって、フリーランスエンジニアがクライアントのシステムを保守・運用する案件の場合は、行為が契約で定められた仕事内容であり、またその行為は法律行為ではないため、準委任契約になります。

参考:民法|e-Gov法令検索

請負契約は成果物に対して報酬が発生

請負契約は、仕事の成果物に対して報酬が支払われる契約です。成果物を納品し、検収が完了してから報酬が発生します。ライターが記事を作成したり、Webデザイナーがイラストを制作したりする例が挙げられます。

請負契約で働く場合は、基本的にはクライアントとの契約に沿って業務さえすれば、勤務時間は受注者が自由に決めることができます。ただし、成果物を納品するまでにかかった時間がいくら長くなったとしても、報酬が増えることはありません。

さらに請負の場合、成果物の完成までが契約内容として定められているため、委任とは異なり成果物に対する瑕疵責任が問われます。

参考:民法|e-Gov法令検索

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業務委託の報酬には税金が発生する

会社員としての雇用契約の場合でも、個人事業主の業務委託契約の場合でも、報酬に対しては税金が発生します。会社員であれば、給与から天引きされて会社が税金の徴収・納付を行うのが一般的です。しかし、業務委託の場合は、自分で確定申告して税金を支払う必要があります。他にも雇用契約で会社員として働く人が副業で一定額以上の収入を得ている場合も、確定申告が必要となります。

税金の計算を間違えたり、払うべき税金が抜けていたりすると、重加算税などのペナルティを受ける場合があるため、報酬に対する税金について正しく理解しておきましょう。

業務委託の報酬に対する税金は、主に以下の4種類が挙げられます。それぞれの定義や計算方法については、詳しく解説します。

・所得税
・住民税
・個人事業税
・消費税

所得税

所得税とは、対象年の1月~12月の間に得た所得(売上から経費などを引いたもの)に対してかかる税金のことです。所得税は、課税される所得金額を以下の「所得税の速算表」を用いて、「課税される所得 × 税率 – 控除額 = 所得税」の計算式で求められます。

たとえば、課税される所得金額が5,000,000円の場合、「5,000,000円 × 0.2 – 427,500 = 572,500円」が所得税の納税額になります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円まで5%0円
1,950,000円〜3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

※課税される所得金額は、1,000円未満の端数金額を切り捨てた金額

出典:No.2260 所得税の税率 平成27年分以後|国税庁

また、所得税法が設ける所得控除の制度を利用すれば、所得税の課税対象となる所得から一定の金額を差し引くことができます。たとえば、社会保険料控除、医療費控除、配偶者控除や扶養控除などです。所得控除の計算方法については、以下の国税庁のページをご覧ください。

出典:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

住民税

住民税とは、住んでいる地域の公共施設や上下水道などの行政サービスを維持するために、都道府県・市区町村に納める税金です。住民税は、対象年の1月1日の住所に応じて額が決まる「均等割」と「所得割」で決まります。均等割は都道府県・市区町村によって金額が異なり、所得割は前年の所得をもとに金額が決定します。

たとえば、東京都の場合、「(前年の所得 – 所得控除)× 10% – 税額控除」で求められます。住民税として納めるべき金額は、行政機関から届く納付書に示されているので、自分で住民税を計算する必要はありません。また、地域別の均等割は、市区町村によって異なるため、気になる方は、以下のページをご覧ください。

住民税の納付は、年4回の分割払いが基本です。納める金額や納付期限は、自治体によって異なりますので、自治体のホームページや確定申告書に記載されている納税通知書を確認するようにしましょう。

参考:個人住民税|税金の種類|東京都主税局

参照:地域別の住民税均等割・所得割一覧|所得税・住民税簡易計算機

個人事業税

個人事業者が、県に収める税金です。ただし、課税される事業は業種が定められており、業種によって、税率が異なります。税額は次のとおりです。

(事業所得+所得税の専従者給与額-個人事業税の専従者給与額+青色申告特別控除額-各種控除額)×税率=税額

税率は業種により異なり、3%、4%、5%の3種類あります。

システム開発の準委任契約による業務は、一般的には対象業務ではありませんが、内容がデザイン業務やコンサルタント業務の場合は、対象業務になります。

参考:個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局

消費税

消費税は、商品やサービスの販売時にかかる税金です。個人事業主に消費税が課税される条件として定められているのは、以下の3つです。

・課税期間より前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円超
・前年の1月1日~6月30日の課税売上高(課税売上高に代えて給与支払額を使うことも可能)1,000万円超
・消費税課税事業者選択届出書を提出している

消費税の仕組みの原則は、売上先より預かった消費税から、支払先に仮払いした消費税を差引いて、差額を税務署に納付するものです。したがって、預かった消費税を使い込まないで必要な納税額をプールしておくことに留意して下さい。

また、2023年10月1日からは、インボイス制度が施行される予定で、消費税の納付方法が変更されます。インボイス制度とは、売り手が買い手に対して、適格請求書(インボイス)を用いて適用税率や消費税額などを正確に伝えるための制度です。インボイス制度の詳しい内容については、以下の区税庁のページをご覧ください。

参照:インボイス制度の概要|国税庁 

確定申告について

個人事業主として業務委託契約を結ぶ場合は、会社員と違って自分で収入と経費から税金を計算し、確定申告、納税を行う必要があります。ただし、本業が会社員で副業所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。確定申告書の提出が遅れると、無申告加算税がかかります。また、それに伴って納税も遅れると、その利息分に相当する延滞税もかかります。必ず期日までに済ませましょう。

また、経費の計算にも注意が必要です。たとえば、自宅を事務所として利用する場合、光熱費や通信費、家賃などの経費を計算できますが、その割合はプライベート用と業務用の比率に沿って正確に計算しましょう。

参照:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

青色申告で申告しよう

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の申告方法があります。青色申告とは、納税者が所得税を正しく納税するための証拠書類や帳簿をきちんと整備したうえで申告する制度で、複式簿記の帳簿が必要になります。一方で、白色申告とは、複式簿記による帳簿が必要なく、青色申告よりも手続きが容易です。

青色申告には、最大65万円の控除が受けられるという大きなメリットがあるので、一定以上の収入のある方は青色申告で確定申告することをおすすめします。なお、青色申告特別控除は、確定申告書を申告期限までに提出しなければ適用されません。そういう意味でも、提出期限を守ることは重要です。

青色申告を行うには開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。開業届には、提出が遅れると認められないといったような厳密な提出期限ではありませんが、事業の開始から1か月以内が提出期限です。そのため、青色申告承認申請書を提出する際に、開業届も合わせて提出することをおすすめします。なお、青色申告承認申請書の提出期限は、申告する年の3月15日までです。

個人事業主として独立するときには、このような税務手続きを正確に行うようにしましょう。

参考:No.2070 青色申告制度|国税庁

参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

業務委託でも業務内容によって源泉徴収される

業務委託でも業務の内容によっては源泉徴収される場合があります。例えば、システム開発やデザインを請負契約で受託した場合等です。源泉徴収とは、報酬をもらう際にあらかじめ課税されることです。業務内容が特定のケースに限られるため、源泉徴収される業務内容については以下の国税庁のサイトを参照してください。

源泉徴収は、確定申告で納税する所得税の一部前払の性格を持つものです。したがって、確定申告により1年間の納税すべき金額が確定したら、源泉徴収されていた金額は、そこから控除されます。また、1年間の納税すべき金額より多く源泉徴収されていた場合は、差額を還付してもらいます。

源泉徴収されている場合、一定金額以上であれば、支払った会社から税務署に「支払調書」が提出されています。給与所得者が年末に受け取る「源泉徴収票」のような性格のものです。(税務署ではなく)報酬を受け取った人に支払調書を渡すことは、支払者の義務ではありませんが、多くの支払者が、受け取った人の確定申告の参考になるよう、支払調書を送ってくれます。または支払者のサイトにアクセスして本人が確認できるようになっていることも多いです。

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

申告書の提出遅れ・税金の支払遅れにはペナルティがある

決められた期限内に確定申告書を提出しなかったり、税金を納めなかったりすると、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税、延滞税などのペナルティが科せられます。ペナルティの額は、申告漏れになった金額、不正行為の程度、納税が遅れた日数などによって異なります。それぞれが課されるケースは、以下のとおりです。上の3つは申告書の提出に関するペナルティ、最後の延滞税は納付がおくれたことによるペナルティです。

  • 無申告加算税

期限後申告・決定があった場合

期限後申告・決定について、修正申告・更正があった場合

  • 過少申告加算税

期限内申告について、修正申告・更正があった場合

  • 重加算税

仮装隠蔽があった場合

  • 延滞税

申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しない場合

期限後申告書または修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額がある場合更正または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額がある場合

出典:No.9205 延滞税について|国税庁

出典:加算税の概要|財務省

確定申告の際には節税しよう

確定申告の際には、節税できるポイントがいくつかあります。以下は、確定申告で節税する主な方法です。

一定の売上がある場合は、白色申告ではなく青色申告にすると、控除額が大きくなり、節税できます。また、経費を漏れなく計上することで課税所得を抑えられるため、経費を使った場合は請求書や領収書などの証明になるものを残し、証明がとれないもの(例えば現金で払った電車賃など)も諦めずにメモを残す等しましょう。

経費にできるかどうかわからない(個人用か事業用か判断が難しい)場合は税理士に相談するのも一つの手です。家族に手伝ってもらっている場合(例えば、帳簿作成をしてもらっている等)、一定の手続をとれば、その家族に支払った給与は経費として認められます。

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まとめ

本記事では、個人事業主として業務委託で働く場合に発生する税金、計算方法、確定申告などについて解説しました。

個人事業主が業務委託契約で得た報酬に対して、所得税、住民税、個人事業税、消費税などの税金が発生します。申告書の提出が期限より遅れたり、税金の支払いが遅れた場合は、ペナルティが発生する可能性があるため、注意しましょう。それぞれの税金の計算方法については、本記事でご紹介しているので、参考にしてください。

また、個人事業主として業務委託契約で働く場合は、自身の収入と経費から税金を計算して、確定申告・納税を行う必要があります。確定申告は、最大65万円の控除が受けられる他色々な優遇措置が受けられる青色申告をおすすめします。青色申告をするためは、開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があるため、早めに準備して済ませましょう。

本記事を参考にして、個人事業主として業務委託で働く場合の税金や計算方法などについて理解し、適切な納税を行うようにしましょう。

監修者:芝会計事務所 代表 公認会計士・税理士
吉田恵子

⚫︎1978年~1993年:昭和監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)勤務
⚫︎1994年:芝会計事務所設立
個人・法人の税務・会計をトータルにアドバイス。
⚫︎著作:「はじめて課税事業者になる人のための消費税の届出・計算・申告」「副業に関する改正所得税基本通達のポイント」(旬刊経理情報2022/11/20)他

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