フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際の8つのチェック項目
フリーランスとして長く活躍していくためには、契約書を結ぶと同時に、契約書について正しい知識を身に付ける必要があります。フリーランスはクライアントとの間で契約を結んだ後に業務を行うため、契約時に発行する契約書について正しい知識を身に付けていないと、後々クライアントとのトラブルが発生する可能性もあるでしょう。
フリーランスの中には十分な内容で業務委託契約書を結んでいない人も多くいます。日本労働組合総連合会(連合)のデータによると、「クライアントからの業務委託契約書に契約内容が必ず明示されている」と回答したフリーランスは全体の29.9%しかいませんでした。
また、「フリーランス実態調査結果」|内閣官房日本経済再生総合事務局によると、トラブルの内容としては「報酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった」が28.8%を占めており、報酬関連のトラブルが多いことがわかります。
今回の記事では、フリーランスが結ぶ機会の多い業務委託契約書について、必要性や代表的なチェック項目、契約を結ぶ際の注意点などについてお伝えしていきます。正しい契約書関連の知識を身に付けておき、クライアントや現場でのトラブルを防止するようにしましょう。
参考URL:日本労働組合総連合会(連合)
参考URL:「フリーランス実態調査結果」|内閣官房日本経済再生総合事務局
目次
そもそもフリーランスは業務委託契約書を結ぶ必要があるのか?
フリーランスは業務委託契約を結ぶ際に契約書を交わす必要があります。その理由としては主に以下の2点が挙げられます。
- 業務委託契約書を結ぶことでトラブル防止になる
- 信頼関係の構築
順にご紹介します。
業務委託契約書を結ぶことでトラブル防止になる
業務の内容や対応範囲などを業務委託契約書としてまとめて取り交わすことで、トラブルの回避につながる可能性があります。フリーランスでありがちなのが契約書を取り交わさず口約束で契約を始めてしまうことですが、業務内容に明確な取り決めがなく曖昧なまま進めてしまうと、トラブルになりやすいです。
特に報酬や著作権、損害賠償などはトラブルの種になりやすいので、必ず契約書に明記して作成してください。記録として残るので、最悪裁判になった場合自分の身を守ることにつながります。
安心して業務に取り組むためにも、契約開始前にしっかり契約内容を定めて、業務委託契約書を結びましょう。
信頼関係の構築
業務委託契約書をクライアントと結んでおけば、お互いに相手を信頼しながら仕事を進められるでしょう。
口頭のみで契約して仕事を行う場合、クライアントと認識が異なって意見の衝突が起こる可能性があります。また、契約書が存在しないことで言った、言わないの平行線の議論に発展したり、いずれかの側が仕事を放棄したりする可能性が高くなり、クライアントから信頼を得にくい場合もあります。
フリーランス、クライアントの双方が安心して業務を進めるために、業務委託契約書で各項目をしっかり定めて締結しましょう。
フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際の代表的な8つのチェック項目
フリーランスは業務委託契約書を結ぶことが重要ですが、契約書を発行する際は内容をしっかりとチェックする必要があります。フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際に代表的なチェック項目は下記8つです。
- 業務内容や契約形態を明確にする
- 契約期間・更新・解除方法を明確にする
- 報酬や経費の支払いに関する条件を明確にする
- 再委託の可否を明確にする
- 著作権・知的財産権を明確にする
- 秘密保持を明確にする
- 不可抗力で業務を遂行できなかった場合の対応を明確にする
- 損害賠償と管轄裁判所について明確にする
順に解説していきます。
業務内容や契約形態を明確にする
契約書で業務の内容が細かく決められていないと、契約外の業務まで依頼されてしまう可能性があります。請け負う業務内容によっては細かく記載するのが難しい場合もありますが、なるべく細かく設定しておくべきです。また、業務内容の追加や変更には別途合意が必要であることも忘れずに明記しておきましょう。
契約形態についても明記する必要があります。業務委託契約には、成果物の納品に対して報酬が発生する「請負契約」と、業務自体に報酬が発生する「委任契約」があります。契約書に明記しておかないと、本来報酬が発生するタイミングで支払いが行われない、といったトラブルに発展する場合があります。
契約期間・更新・解除方法を明確にする
案件の契約期間や更新、解除のルールを明確にしておけば、計画的に仕事を進められるでしょう。フリーランスがクライアントと契約する労働期間は案件によって様々です。事前にどの程度働くかを明確にしておくと、次の仕事の獲得に支障が生じて収入が不安定になるのを防げます。
また、案件の更新や解除のルールを明確にしていないと、クライアント側の意向次第で簡単に契約を打ち切られる可能性があります。突然契約を打ち切られてしまうと当然報酬は獲得できないので、収益の不安定さにつながります。自分の生活を守るためにも、解除のルールは明確にしておきましょう。更新についてはあらかじめ自動更新にしておくと、契約書締結の手間を省けます。報酬や経費の支払いに関する条件を明確にする
業務委託契約書で報酬や経費の支払いに関する条件を明確にすると、報酬の未払いや支払い遅延を防止できます。フリーランスがクライアントと業務委託契約書で報酬や経費の支払いについて明記していない場合、クライアントは支払いの条件を自由に設定できます。報酬に関するトラブルは非常に多いので、必ず明確にして取り決めを行ってください。
また、成果物を納品する案件の場合、成果物納品時に支払いが発生する場合が多く、成果物がクライアントに受け入れられなければ報酬が発生しない恐れもあります。成果物に対しての納品と検収のルールなども事前にしっかりと定めておきましょう。
再委託の可否を明確にする
再委託とは、クライアントから依頼された業務を第三者に頼むことです。業務の内容によっては自分で進めるよりも第三者に依頼したほうが効率的で、クオリティも担保できる場合があります。
しかし、クライアントによっては情報セキュリティや信頼性の観点から再委託を好まない場合もあります。クライアントが望まない、認めないのに再委託をしてしまうと損害賠償などのトラブルに発展する可能性があります。再委託の可否に関する取り決めも契約書内に明記しておきましょう。
著作権・知的財産権を明確にする
業務で制作した成果物に関する著作権や知的財産権について、業務委託契約書で明確にしておきましょう。
フリーランスが案件で作成した成果物を納品した場合、著作権や知的財産権がクライアントに与えられる場合が多いです。しかし、案件内容や成果物によってはフリーランスが著作権や知的財産権を所有する場合があるため、業務委託契約書に明記する必要があります。
特にクライアントからの報酬より著作権や知的財産権による利益の方が大きい場合、後からトラブルにならないためにも、予め明確にすることが大切です。
秘密保持を明確にする
フリーランスとクライアントの間で秘密保持に関して明確にしておくことで、情報の取扱いについて信頼関係を築けるでしょう。秘密保持とは、業務上で知った情報を外部の者に漏らしたり、不正利用することで、違反すると損害賠償に発展する可能性があります。
情報が重要な役割を担う現代において、業務で得た情報の取り扱いは丁寧に行う必要があります。大切な情報を部外者に漏らさないのは当然のことですが、クライアントとの信頼関係のためにも契約書で明確にしておきましょう。
不可抗力で業務を遂行できなかった場合の対応を明確にする
不可抗力によって業務を遂行できない場合の対応についても決めておきましょう。不可抗力とはたとえば、病気や事故、災害などの影響を指します。
こういった不可抗力の影響で業務が進まなくなる恐れもあるので、あらかじめ不可抗力発生時の責任について定めておきましょう。どうしても業務を進められなくなった際に責任を求められるのを回避するためです。
損害賠償と管轄裁判所について明確にする
万が一業務上で損害賠償が発生する問題に直面したときのために、損害賠償についても契約書で明確にしておきましょう。損害賠償が発生しないように業務を進めるのは当たり前なのですが、意図せず情報漏えいが発生してしまったり、著作権の侵害が発生した場合は損害賠償につながる可能性があります。
また、裁判に発展したときのために管轄裁判所を明記しておきましょう。遠方の裁判所を管轄裁判所にしてしまうと、解決するのに時間がかかってしまうかもしれません。近隣の裁判所に設定するか、フリーランス、クライアント双方の中間地点を採用するなどしましょう。
フリーランスは業務委託契約書のテンプレートを活用しよう
フリーランスが業務委託契約書を作成する必要がある場合、テンプレートを活用して効率的に契約書を作成しましょう。
業務委託契約書を一から作成しようとすると、分量が多く専門的な知識も多く必要になるため、契約書の作成に時間がかかってしまいます。そのため、インターネット上で公開されている業務委託契約書のテンプレートを活用し、契約書作成を効率化することがおすすめです。
例えばbizoceanやビズ研、ビズルートなどで簡単に業務委託契約書のテンプレートはダウンロードできるため、有効活用していきましょう。
フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際の注意点
ここまで見てきたように、フリーランスは業務委託契約書を結べば安心して業務を進められますが、契約書を交わす際に注意しなければいけない点もあります。フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際の注意点は下記2点です。
- 契約書の内容はできる限り明確にする
- 双方合意をした上で締結をする
順に解説していきます。
契約書の内容はできる限り明確にする
業務委託契約書の内容はできる限り明確にし、契約後にフリーランスとクライアントの間で認識のズレが生じないようにする必要があります。
業務委託契約書を作成しても、記載されている内容に誤りや自分が受け入れられない内容がある場合、仕事を安心して進められません。
また、記載されている内容が曖昧であると、解釈が自由にできてしまい、後でフリーランスとクライアントの間で認識のズレが発生する可能性があります。そのため、業務委託契約書の内容はできる限り明確にすることが大切です。
双方合意をした上で締結をする
業務委託契約書はフリーランスとクライアントの双方が合意した上で締結しましょう。
業務委託契約書の内容にフリーランスとクライアントの一方が納得しただけでは業務を開始できません。お互いに認識をすり合わせ、安心して仕事ができる信頼関係を築くためには、業務委託契約書の内容にフリーランスとクライアントの双方が合意する必要があります。
仮に納得のいかない内容があれば契約前にしっかりと話し合い、業務開始後にトラブルが発生しないようにしましょう。
専門家への依頼も検討する
業務委託契約書の作成は専門的な知識が必要なため、自力で作成するのは難しい場合があります。雛形を使っても書いてある内容を正確に理解して、内容が足りているか判断するのは難しいです。
自力で作成した業務委託契約書の内容が十分かどうか不安な場合は、司法書士や弁護士などの法律の専門家に依頼するのも手です。特に高額な案件や難易度の高い業務内容の場合などは、費用はかかりますが専門家の手を借りたほうが安心できるでしょう。
まとめ
今回の記事では、フリーランスが特に結ぶことが多い業務委託契約書について、必要性や代表的なチェック項目、契約を結ぶ際の注意点などについてお伝えしてきました。フリーランスは業務委託契約でクライアントと契約する場合が多いですが、契約書を発行していないことが原因でトラブルが発生する可能性があります。労働条件や報酬の支払いなどについて労働契約書で明確にし、安心して仕事を進められるようにしましょう。
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