フリーランス(個人事業主)の住民税について解説!|いくら支払うか、その計算方法や納付法、節税術も

フリーランスとして活動する上で頭を悩ませるのが税金に関することでしょう。住民税もフリーランスが支払うべき税金のひとつですが、「どのように計算すればいいのか?」「どのように支払えばいいのか?」が、わからない人も少なくありません。

収入に直結するものなので「経費にできるものはどんなものか?」「節税方法はあるのか?」といったことが気になる人も多いでしょう。

そこで本記事では、住民税の基礎知識や税率を踏まえ、フリーランスの住民税の計算方法について解説します。また、納付時期・方法や滞納したケース、節税術なども紹介しますのでぜひ参考にしてください。

住民税とは

住民税は、教育・福祉・ゴミ処理といった身近な行政サービスを提供するための費用として集められる税金です。

地方の行政サービス提供のために必要な税であることから住民税は地方税に含まれ、「市町村民税」と「道府県民税」の2種類に分かれます。この2つを併せたものが住民税です。

さらに、住民税では「個人住民税」「法人住民税」の2つに分かれ、個人が負担すべき税金と法人が負担すべき税金に分かれます。

住民税が免除になる場合

住民税は一定の条件を満たすと免除(非課税)されることがあります。

一定の条件を満たすかどうかは、主に以下の要素を基に判断されます。

  • 所得額
  • 扶養家族の有無
  • 未成年
  • 障害者
  • ひとり親
  • 寡婦

住民税が免除される具体的な条件は以下のとおりです。

●非課税の制度は次の人が該当します。

(1)その年の1月1日現在で、生活保護法による生活扶助を受けている人。

(2)障害者、未成年者、ひとり親、寡婦(夫)の人で、前年の合計所得が135万円以下(給与収入なら204万4千円未満)、(令和2年度までは125万円以下)の人。

(3)前年の合計所得が一定の所得以下の人。

35万円×(本人+被扶養者の人数)+21万円(21万円は被扶養者がいる場合に加算)+10万円(令和3年度から加算)

なお、所得割の非課税の場合は、次の所得以下の人。

35万円×(本人+被扶養者の人数)+32万円(32万円は被扶養者がいる場合に加算)+10万円(令和3年度から加算)

●前年の収入が以下より少ない人(合計所得が45万円以下(令和2年度まで35万円以下))

(1)アルバイトやパートの給与収入が100万円以下

(2)65歳以上で年金受給のみの人は、年金収入が155万円以下

(3)65歳未満で年金受給のみの人は、年金収入が105万円以下

(4)不動産収入等所得がある人は、収入から必要経費を引き、合計所得が45万円以下(令和2年度まで35万円以下)

※東京都港区区役所公式サイトより引用

参考URL:住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか。(東京都港区区役所公式サイト)

住民税の種類

先述のとおり、住民税は個人と法人に分かれていますが、個人の住民税はここからさらにいくつかの種類に分かれます。

この項目では、住民税の種類を深掘りして解説します。

住民税は「所得割」と「均等割」の主に2種類

個人の住民税は主に所得割と均等割に分かれます。

所得割は、その人の所得金額に応じた税額負担が求められるものです。所得とは企業に勤めて受け取る給与や、自分が運営する事業で獲得する利益のことで、この金額が多ければ多いほど所得割として納める金額も高くなります。

ただ、給与や事業での利益にそのまま税金がかかるわけではありません。必要経費や各所得控除、上場株式等の譲渡による損失の繰越控除などを引いた金額に対して税率をかけて計算します。

均等割は、地域社会の会費のようなものとして捉えられています。所得割とはちがい、常に定額の負担を求められるものです。

その他の住民税(利子割・配当割・株式等譲渡所得割)

住民税には、利子割や配当割、株式等譲渡所得割といった税金もあります。これらの税金は所得割での所得から分離されて、国税である所得税とともに道府県民税として課税されます。

ただ、これらの税金は納税者が直接納付することはありません。利子や配当などを支払ってくれる金融機関や証券会社が、特別徴収という形で代わりに納付してくれます。

利子割は金融機関などから受け取る利子にかかる税金です。利子割の主な内容は以下のようになります。

  • 特定公社債以外の公社債の利子
  • 銀行・信用金庫などに預けている預貯金の利子
  • 勤務先預金などの利子

配当割は上場株式などの配当や割引債の償還差益などにかかる税金です。上場株式などには、以下のようなものが該当します。

  • 上場されている株式
  • 特定投資法人の投資口(不動産投資信託(REIT)など)
  • 特定公社債

株式等譲渡所得割は、源泉徴収ありの特定口座で行われる上場株式などの譲渡所得にかかる税金です。

住民税の税率

この項目では、住民税の計算に使われる税率について解説します。

住民税の税率は10%

住民税の所得割の税率は所得に対して一律10%です。所得から所得控除を引いた額に対して10%をかけて計算します。前年の「前年の1月1日から12月31日」までの所得が対象です。

均等割は市町村民税として3,500円、道府県民税として1,500円課税され、合計5,000円と定められています。

住民税は「収入」と「住んでいる地域」で決まる

住民税はその大部分を所得割が占めるので、税額も収入によってほぼ決まると言えます。税率も標準税率が定められているので、基本的に利子割や配当割をのぞけば、どの地域であっても収入のみが住民税の額を決めると言えるでしょう。

ただ、市町村によっては標準税率とはちがう税率を使用するケースがあり、同じ所得で計算しても税額に多少のちがいが出ることもあります。

住民税が課税される地域は1月1日時点で確定します。そのため、1月1日以降に住民票を移動させても、納税する地域が変更されることはありません。

住民税の計算方法|いくら払えばいい?

この項目では、住民税の額が決定する流れと計算方法を解説します。

課税所得を求める

まず課税所得を求めます。課税所得は、合計所得金額から損失の繰越控除を引いて総所得金額を計算し、さらに総所得金額から所得控除を控除して算定します。

住民税の所得控除で主なものは以下のとおりです。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除

所得割を計算する

総所得金額から所得控除の合計を引いた課税所得に対し、税率10%をかけて所得割の暫定額を計算します。

計算式は以下のとおりです。

課税所得額×税率10%=税額控除前の所得割額

税額控除

前項の所得割の暫定額から適用できる税額控除を引き、最終的な所得割の額を算出します。

主な税額控除は以下のとおりです。

  • 配当控除
  • 外国税額控除
  • 寄附金税額控除
  • 配当割額及び株式譲渡所得割額の控除
  • 住宅借入金等特別税額控除
  • 調整控除

均等割を加える

税額控除を引いて算出した所得割の金額に、定額である均等割5,000円を加えると住民税の合計金額がわかります。

納付時期

ここからは、住民税の納付時期について解説します。

普通徴収の場合の住民税の支払い

自分で住民税を納付することを普通徴収と言います。

普通徴収の流れは以下のとおりです。

  • 2~3月中に確定申告を行う
  • 6月に納税額の通知書が市区町村より送られてくる
  • 6月・8月・10月・翌年の1月の計4回に分けて支払う(一括での支払いも可能だが、税額の割引はない)

退職したとき

会社員が退職したときの住民税は、退職時期や再就職するかどうかで支払い方法が変わります。

この項目では、会社員が退職したときの住民税納付方法について紹介します。

1月1日~5月31日に退職

会社員が1月1日~5月31日の間に退職したケースでは、5月までの住民税が退職する月の給与や退職金から一括徴収されます。

徴収される住民税の額が退職月の給与と退職金の合計額よりも多い場合は、納付書で支払う普通徴収になります。

6月1日~12月31日に退職

会社員が6月1日~12月31日の間に退職したケースでは、退職月の住民税は給与からの天引きです。そして、退職した月の翌月からは普通徴収になり、納付書で納付することになります。

ただ、退職月の給与や退職金の額に余裕があるなら、退職時に翌年の5月までの住民税を一括徴収してもらえるケースもあります。もし一括徴収を希望するなら、勤務先への申し出が必要です。

退職後にすぐ再就職

前職を退職後、すぐに再就職するケースでは再就職先で特別徴収を継続することが可能です。このケースではそのまま給与からの天引きを継続できるため、自分で納付する必要はありません。

この方法を使うには、退職する会社と再就職する会社でそれぞれ事務手続きを行う必要があります。具体的には、退職する会社に「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を記入してもらい、再就職先に提出すれば特別徴収を継続できます。

ただ、退職する会社に再就職先を知られたくない場合や再就職まである程度の期間が空く場合は、この方法が使えないので普通徴収の納付書で納めましょう。

海外にいるとき

海外へ行く、もしくは居住する場合の住民税の扱いも、前述の1月1日時点にどの地域に住民票があるかで決まります。そのため、旅行で海外に行く場合は通常どおり課税されます。

海外赴任や留学などで1月1日をまたいで海外に居住する場合は、日本国内に居住しないことになるので住民税も課税されません。ただ、年度の途中で海外に赴任・留学などを行うときは、その年度の住民税が課税されるので注意してください。

また、現在海外に居住していて日本で納税手続きができないケースでは、納税管理人を選定して代理納税を行う必要があります。

納付方法

住民税の納付方法には、自分で納付する普通徴収と会社員のように給与から天引きしてもらう特別徴収の2種類があります。フリーランスのような個人事業主は給与所得ではないので、特別徴収を選ぶことはできません。そのため、必然的に普通徴収で納付することになります。

住民税の計算については、2~3月に所得税の確定申告を行えば前年の所得税の額に基づいて地方自治体が額を算出して納付書を送付してくれます。

自分で住民税を支払う場合、選べる支払い方法は以下のとおりです。

  • 金融機関(振込みだけでなく、金融機関によっては口座振替も利用できる)
  • 都税事務所や自治体窓口
  • コンビニ
  • スマホ決済アプリ
  • クレジットカード
  • ペイジー
  • 口座振替

利用できる支払い方法は各自治体で異なるので、近くの市区町村窓口で確認してください。

また、住民税はクレジットカードやスマホ決済を利用するとポイントをもらえますが、納税時にかかる決済手数料の額に注意が必要です。手数料は各自治体によってさまざまなので、場合によっては獲得できるポイントよりも手数料のほうが高くなることもあります。

もし滞納したら…?

住民税を滞納した場合、滞納処分という強制的に税金を徴収する手続きを取られることがあります。また、延滞金(国税では延滞税と呼ぶ)というペナルティを科せられることもあります。これは、納付が遅れた日数に応じて課されるものです。

滞納処分が行われるときは、まず督促状によって督促の手続きが行われ、10日経過しても納税されなければさらに催告状を送付するケースが多いです。催告状を送付しても納税されなければ財産の差押えが行われ、財産を換金して納税に充てられます。

実際は督促状の発送から10日経過した段階で財産の差押えが可能になります。催告状の送付は定められた手続きではないですが、穏便に済ませたい役所から発送されるものと考えていいでしょう。

フリーランスは経費や控除、青色申告を活用して節税しよう

この項目では、フリーランスが住民税を納める上で重要な要素である経費や控除、青色申告について解説します。

経費

フリーランスの経費とは、仕事で必要に迫られて使った費用のことです。例を挙げると仕事で使うパソコンやプリンターなどの購入費用、ExcelやWordなどのオフィスソフトの利用料などがあります。

また、自宅を事務所として使用している場合、仕事に使用していると認められる割合の分だけ家賃を経費にすることも可能です。さらに仕事の質を上げるためのセミナー受講料や、教材購入代金なども経費にできます。

控除

フリーランスの住民税においても、適用できる控除が多ければ多いほど事業所得から差し引ける金額が大きくなり、課税所得を減らすことが可能です。課税所得が減れば、その分住民税の額も下がります。

つまり経費と同様に、控除の分だけ所得を増やせると言えます。

青色申告

青色申告とは、日々の取引を記録した帳簿に基づいて確定申告を行うものです。この方法を利用するには、複式簿記か簡易簿記の形式に則った帳簿を用意することが義務付けられています。

さらに税務署に対して、事前に開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。未提出の場合は自動的に白色申告となります。

青色申告は節税効果があることで知られています。主なメリットは以下のとおりです。

  • 青色申告特別控除が受けられ、最高65万円の節税効果が得られる
  • 青色事業専従者給与を必要経費にできる
  • 純損失の繰越しと繰戻しができる
  • 貸倒引当金を計上できる
  • 少額減価償却資産の特例を使える

白色申告とくらべて申請に手間がかかりますが、節税面で大きな効果が期待できます。

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