フリーランスで契約解除されたらどうすれば良い?一方的な解除への対処法

フリーランスの方にとって、クライアントから突然契約を解除されることは、生活にも影響を与える大きな問題です。しかし、なぜ突然契約を解除されることがあるのか、その実情までは把握しきれていない方も多いでしょう。

本記事では、フリーランスが突然契約を解除されたときの対処法について解説します。契約解除に関する基礎知識や、避けられない契約解除の場面に遭遇した際の対応についても確認していきましょう。契約解除されないフリーランスとなるための方法もご紹介しているので、突然の契約解除に備えておきたいフリーランスの方は、ぜひ最後までご覧ください。

フリーランスは突然の契約解除が起こりうる

フリーランスという働き方は、自分の裁量で仕事をコントロールできることがメリットです。しかし一方で、クライアントの都合で突然の契約解除が発生し得る働き方でもあります。

突然の契約解除に至る理由としては、フリーランス側の仕事内容に対する不満や、クライアント側の予算都合などが挙げられます。とくに、2023年の10月から本格的にスタートしたインボイス制度を理由に、フリーランスとの契約を解除していく企業も少なくありません。

クライアント都合での契約解除は、一部の理由を除いては、受け入れることが基本です。しかし、あまりに突然の契約解除は「不当」と見なされるケースもあります。不当な契約解除の場合においては、クライアントのいうまま受け入れる必要はありません。不当な解除の場合は、適切な処置が必要です。

契約解除の基礎知識|法的に正当な解除か確認しよう

クライアントから突然契約を解除された場合、その内容が法的に正当なものかを確認した上で受け入れる必要があります。

契約解除における基礎知識を、以下の視点から確認していきましょう。

  • フリーランスの契約形態は3種類
  • 契約形態ごとの契約解除の条件
  • フリーランスが契約解除された場合の影響

上記は、契約解除の対策としてはもちろん、フリーランスとして働く上で覚えておきたい基礎知識です。契約に関する知識がおざなりになっている実感のあるフリーランスの方は、この機会に覚えておくとよいでしょう。

フリーランスの契約形態は3種類

フリーランスの契約形態には、主に以下の3つがあります。

  • 請負契約
  • 委任契約
  • 準委任契約

それぞれどのような契約形態なのか特徴を解説していくので、契約解除における知識としてはもちろん、新たな案件を獲得する上での知識としてもお役立てください。

請負契約

受注側であるフリーランスが委託された業務の完成を約束する契約形態を「請負契約」といいます。請負契約におけるクライアントは、業務の結果に対して報酬を支払わなければなりません。システム開発や文章コンテンツの作成など、比較的短期間で成果が見える仕事に多く見られる契約形態です。

また、請負契約には「契約不適合責任」があることも覚えておくとよいでしょう。

たとえば、契約内容に適していない、基準を満たしていない成果物に対して発注側が損害賠償・追加作業を求めたり、納品後の対応を求めたりといったことが起こり得ます。

請負契約においては、発注側・受注側とで「完成」の認識を統一しないとトラブルになるため、契約段階で擦り合わせておくことが重要です。

委任契約・準委任契約

発注側が受注側に対し、法律関連の行為を委託する契約のことを委任契約といいます。対して準委任契約とは、法律行為以外の事実行為を委託する契約のことです。エンジニアなど法律に関連しない事実行為の委託は、準委任契約に該当します。

委任契約・準委任契約の特徴は、成果物に対して支払いが発生する請負契約とは異なり、あくまで労働した対価として報酬が支払われるということです。仮に仕事を完遂していなくとも、労働した分の「過程」に報酬が発生する点に、請負契約と委任契約・準委任契約との違いがあります。

ただし、委任契約・準委任契約においては、受注側に「善管注意義務」があることを留意しておかなければなりません。

受注側の故意・過失で仕事の過程における損害を発生させた場合は、善管注意義務により損害賠償責任を負う必要があります。請負契約と同様、契約後のトラブルを発生させないように、善管注意義務も含めた契約内容を確認した上で契約を進めましょう。

契約形態ごとの契約解除の条件

請負契約・委任契約・準委任契約それぞれの、契約解除における条件をご紹介します。

自身がどの契約形態でクライアントと仕事をするのか、方向性を決める上でも重要な視点であるため、ぜひ参考にしてください。

請負契約の解除条件

請負契約では、発注者・受注者いずれかの当事者に、債務不履行があった場合に契約解除できます。ただし、契約の解除には発注者・受注者双方の合意が必要となるため、一方的な都合では契約を解除できないことも覚えておきましょう。

また、発注側が破産手続開始の決定を受けた場合も、契約解除につながります。受注側に仕事をわたす土台そのものがなくなるということなので、致し方ない事情といえるでしょう。

請負契約の解除においては、解除に至る条件が揃っているだけではなく、解除における正しい手続きが取られているかも確認しなければなりません。契約解除の手続きについて理解しておかなければ、支払い業務における責任の所在や、不当な損害賠償を言い渡される可能性があるため、注意が必要です。

委任契約・準委任契約の解除条件

委任契約・準委任契約も請負契約と同様に、発注者・受注者いずれかの当事者に債務不履行があった場合は、契約解除できます。また、受注側と発注側それぞれの同意がなければ契約を解除できない点も、請負契約と同様の条件です。

委任契約・準委任契約であっても、発注側が破産手続開始の決定を受けた場合は、請負契約と同様に契約解除の対象となります。

委任契約や準委任契約の場合も、不当な損害賠償の請求などが発生しないよう、契約段階で「仮に契約を解除することがあるのなら」と条件面について詳しく擦り合わせておく必要があるでしょう。

フリーランスが契約解除された場合の影響

フリーランスが契約を解除された場合の影響は、契約形態ごとに異なります。

契約解除された場合の具体的な影響について、請負契約と委任契約・準委任契約それぞれで解説します。

請負契約|未完成の仕事への報酬は支払われない

請負契約においてクライアントから正当に契約を解除された場合は、未完成の仕事に対する報酬は発生しません。たとえ実動時間が発生していても、成果物として提出されていなければ報酬は発生しないので、注意してください。また経費負担についても、契約書に具体的な取り決めがなければ、未完成の仕事における請求はできないと考えられます。

作業途中の仕事がいくつもある中で契約解除になってしまうと、生活に与える影響も大きくなるでしょう。

契約解除がそもそも正当なものかどうか、確認した上で同意するようにしてください。

委任契約・準委任契約|遂行した仕事への報酬が支払われる

委任契約・準委任契約の場合は、請負契約とは異なり、遂行した仕事分の報酬は発生します。委任契約・準委任契約はたとえ完成に至っていない仕事があったとしても、解除前におこなっていた仕事に関しては報酬が発生する仕組みです。

仮に契約解除を理由に発注側が報酬を支払わないとしても、委任契約・準委任契約であれば正当な理由で受注側から請求できます。ただし、契約解除で収入が途絶える事実に変わりはないため、請負契約と同様、解除における影響は非常に大きいといえるでしょう。

フリーランスが契約解除された場合の対処法

契約解除されたフリーランスが取るべき対処法を、以下5つの視点から解説します。

  • まずは契約解除の理由と根拠を確認する
  • エージェント経由の案件の場合はエージェントに相談する
  • 契約解除を避ける方法がないかクライアントと話し合う
  • 当事者同士での解決が難しい場合は弁護士に相談する
  • 金銭的な問題を解決する

1つずつ詳細を見ていきましょう。

まずは契約解除の理由と根拠を確認する

契約解除を言いわたされた際、まずは契約解除自体が正当なものかを確認する必要があります。なぜ契約が解除されるのか、クライアントが提示する理由を確認し、正当な根拠のある事情かどうかを確認しなければなりません。

その上で、契約内容の再確認もしておきましょう。契約が解除される条件や違約金・損害賠償に関する事項など、クライアントから伝えられた内容とズレがないか確かめることで、トラブルを防止できるでしょう。

また、契約解除を言いわたされて以降、解除通知も含めた記録をとっておくことも有効です。

エージェント経由の案件の場合はエージェントに相談する

エージェントを経由してクライアントと繋がっている場合は、契約解除の際にもエージェントに間に入ってもらうのがベターでしょう。直接交渉よりも、仲介役であるエージェントに入ってもらうほうが、契約解除に関する話し合いがスムーズに進みます。

エージェントに契約解除の話し合いに入ってもらう場合は、契約解除の理由や違約金などの情報を提供し、必要であれば証拠と根拠となるものの提出もしましょう。契約解除以外の方法について交渉してもらうことも大切です。

契約解除を避ける方法がないかクライアントと話し合う

クライアントと話し合い、契約解除以外の方法がないか模索することも大切です。契約条件・業務範囲・報酬・稼働時間の変更などで対応できないか、受注側から歩み寄ることで契約解除を防げる可能性もあります。

ただし、クライアントに都合のよい値引きとなったり、報酬の未払いが発生したりする可能性があるので、条件の妥協や歩み寄りはあくまで「最後の手段」としておきましょう。仮に契約条件を変更する際は、合意内容を必ず書面で残しておくことが大切です。

当事者同士での解決が難しい場合は弁護士に相談する

契約解除に関する話し合いは、当事者同士のみで解決まで進めるのは難しいこともあります。その場合、弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。

弁護士に相談し契約解除に関する不服を申し立てる場合は、弁護士の署名が記載された内容証明郵便を送ります。そのうえで、調停・訴訟などの法的措置を促し、クライアント企業に対応を求めるのが一般的です。

契約解除にまつわる相談先は、任意の弁護士だけでなく、フリーランス・トラブル110番法テラスといった契約解除にまつわるトラブルの対処実績のある機関を利用するのもよいでしょう。

金銭的な問題を解決する

クライアントと契約解除に関する話し合いや法的措置をおこなう中で、報酬の未払いなど金銭的な問題が残っている場合もあります。その場合、並行して金銭的な問題の解決・清算につながる動きをとらなければなりません。

具体的には、成果に対する分の報酬を請求したり、違約金を請求したりといった行動が挙げられます。しかし、契約内容によっては、クライアントから損害賠償やキャンセル料が請求されることもあるので、覚えておくとよいでしょう。

契約解除が避けられない場合にすべきこと

どうしても契約解除が避けられない場合は、以下の行動をとりましょう。

  • フリーランスエージェントなどを活用して新しい案件を獲得する
  • スキルアップのために勉強する
  • 支出を見直して収支のバランスをとる

契約解除はピンチにつながるものの、新たなチャンスを掴むきっかけにもなります。

上記の行動とあわせてポートフォリオを一新することで、これまでとは異なる仕事を見つけられ、仕事の幅が広がったり、自身の成長につながるかもしれません。

フリーランスエージェントなどを活用して新しい案件を獲得する

契約解除をきっかけとし、フリーランスエージェントなどで新しい案件獲得に向けて動き出しましょう。エージェントに登録することは、自分の市場価値を再認識するきっかけにもなります。

再び契約解除が発生しないよう、自分に合った案件を紹介してもらうようにしましょう。万が一トラブルが発生しても、エージェントが間に入ってくれるので安心です。クラウドワークスランサーズRelanceなどを活用すれば、市場の情報も得られます。仮払いシステムを採用しているエージェントも多いので、報酬の踏み倒し対策にも有効です。

また、知人や旧取引先に連絡し、案件を紹介してもらう方法もあります。お互いに信頼できる取引先と仕事ができれば、突然の契約解除も発生しにくいでしょう。

スキルアップのために勉強する

契約解除によって生まれた時間を活用し、スキルアップのために勉強することで、新たな案件獲得や契約解除の防止につながります。クライアントからの契約解除はスキル・経験不足で発生することも多いため、再発防止としては最も適した方法かもしれません。

これまでおこなってきた業務のレベルを底上げすることはもちろん、未開拓の知識・技術を身につけ、獲得できる案件の幅を広げることも大切です。

勉強に時間を割きたい場合は、関連スキルの教育カリキュラムを有料で受講するのもよいでしょう。契約解除の原因を把握した上で、再発防止につながる対策を取ることが大切です。

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支出を見直して収支のバランスをとる

契約解除された案件分の収入がなくなると想定し、支出を見直すことも大切です。収入がない中でこれまで通りの支出を続けていては、生活はままならなくなってしまいます。

支出を減らすことで、収入が減るダメージを少しでも軽減できるよう、バランスを整えておきましょう。

金銭面では、各自治体に問い合わせて、補助金を利用する方法もあります。利用条件にマッチすれば、まとまったお金が支給されるので、自治体の公表する情報をこまめにチェックしておきましょう。条件によっては国民年金保険料の免除・猶予制度も利用できるので、収支のバランスをとるための対策として検討してみてください。

参考:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度|日本年金機構

契約を切られないフリーランスになる方法

契約解除における対策を把握することももちろん大切ですが、そもそも契約を切られないフリーランスになる意識も大切です。

ここでは、契約を切られないフリーランスになる上で必要な以下4つの視点について解説します。

  • 応募時にスキルや実績を偽らない
  • 契約前に内容をきちんと確認する
  • 契約中は仕事を全うする
  • 常にクライアントとコミュニケーションをとり信頼関係を築く

それぞれのポイントを押さえ、今後に備えましょう。

応募時にスキルや実績を偽らない

クライアントに対しスキルや実績を偽ると、業務内容のミスマッチが発生しやすくなります。ミスマッチが発生すると成果を上げにくくなり、経験やスキル不足を理由に契約を解除されてしまう可能性が高まりますので、注意しましょう。

高単価案件を獲得したいからと自身を偽ることは、後々の損失につながります。スキルや実績は地道に積み上げるしかありません。

スキル・実績に関しては、背伸びしすぎず応募段階のものを正確に伝えるよう意識し、あくまで自分の現状にマッチした案件を獲得することが重要です。

契約前に内容をきちんと確認する

事前に契約内容を確認しておくことで、不当な契約解除を防止できます。

フリーランスは契約を結ばず業務を進めるケースもありますが、トラブルを防止するためにも、契約書は確実に交わしておくべきでしょう。その上で、契約書の内容を確認し、受注側が不利になる条件ではないか、解除条件は何かをしっかりと確認しておく必要があります。

契約中は仕事を全うする

与えられた仕事を全うすることで、クライアントの信頼を獲得でき、突然の契約解除を防げます。クライアントが求める仕事をしっかりと着実におこなうことで、信頼関係の構築ができるでしょう。ある程度の信頼関係があれば、突然契約を解除されることはほとんどないはずです。

報連相を怠らない、フィードバックを真摯に受け取る、といった姿勢を示すことも大切です。

常にクライアントとコミュニケーションをとり信頼関係を築く

クライアントとこまめにコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することも大切です。疑問点について質問したり、業務効率向上の手法を提案したりと積極的なコミュニケーションを図ることで、信頼関係を築きやすくなります。

信頼関係を構築できれば、スキルや経験だけではなく人柄も評価してもらえるので、代替のきかない人材として評価され、重宝されるでしょう。ただし、コミュニケーションだけを意識するのではなく、基本的な業務をしっかりおこない成果を出すことも忘れてはいけません。

まとめ

本記事では、フリーランスが突然「契約解除された」という事態を防ぐため、契約解除の基礎知識や対処法、契約を切られないための行動・心構えなどについて解説してきました。

突然の契約解除を防ぐには、契約前にしっかりと確認をとることが大切です。また、突然の契約解除には理由が不当なものもあるため、その場合は第三者に依頼するなども含めて対処しましょう。

また、既存のクライアントに依存せず、契約するクライアントを増やす意識も大切です。契約解除をきっかけに勉強することで、これまでは縁のなかったクライアントとつながれる可能性もあるでしょう。

契約解除はピンチにつながる事象ではあるものの、見方を変えればチャンスにもなります。この記事でご紹介した、契約解除が避けられない場合におこなうべき対策もあわせて、ピンチをチャンスに変えられるフリーランスになってください。

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