フリーランスは報酬踏み倒しトラブルに注意!対処法と予防法を確認しよう
フリーランスとして働く上で気になるトラブルが、報酬の踏み倒しです。近年フリーランス人口が増加しており、それに伴い報酬踏み倒しトラブルも増加傾向にあります。
万が一報酬踏み倒しトラブルに遭遇した場合に備え、どのように回収するべきかの知識をあらかじめ身につけておくと安心です。
この記事では、報酬踏み倒しトラブルに遭遇した際の具体的な対処法を詳しくご紹介します。この記事を読むことで、トラブルに遭遇しても慌てずに対処するための知識を身につけましょう。
目次
フリーランスの報酬未払いトラブルは増えている
近年、フリーランス人口が増加していることなどに伴い、フリーランスの報酬未払いトラブルが増えていることをご存知でしょうか。
まずはじめに、フリーランスの報酬未払いトラブルが増えている実態について、詳しく見ていきましょう。
報酬踏み倒しは起こりうる
まず大前提として、報酬踏み倒しというトラブル自体は誰にでも起こる可能性があります。フリーランスとして働く以上、そのことを常に念頭に置いておかなければなりません。
厚生労働省のデータによると、フリーランスのトラブルに関する相談を受けつけている「フリーランス・トラブル110番」に寄せられた相談件数は、2022年の6月が613件、7月が577件、8月が642件となっています。2021年の1か月平均が約350件であることから、件数の大幅増加が顕著です。
上記の相談内容のうち、「報酬の支払い」に関するものが32.1%、「契約内容」が22.4%となっており、全体の5割強を占めています。
また、2020年に公表されたフリーランス協会の「フリーランス白書2020」によると、企業との契約トラブルで最も多いのは「報酬の支払いが遅延される」こと(43.7%)でした。
これらの調査結果から、報酬や契約に関するトラブルはフリーランスにとって身近な存在であるという実情がうかがえるでしょう。
参考:フリーランス・トラブル110番の相談実績について|厚生労働省
報酬未払いが増加している理由
フリーランスの報酬未払いが増加しているのはなぜなのでしょうか。
これには2つの理由が考えられます。
1つ目の理由は、フリーランスや副業で働く人が増えたからです。
「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によると、2021年のフリーランス人口は約1577万人で労働人口の22.8%を占めており、経済規模は23.8兆円にものぼります。
フリーランスとして働く人が増えているため、フリーランスを対象とした仕事自体が増加し、トラブルも増えているというわけです。
2つ目の理由は、SNS経由などでカジュアルに仕事を依頼できるケースが増えたからです。
一般的にフリーランスが企業から業務を請け負う場合には、業務委託契約のような形で契約を結び、納品と報酬の支払いに対して取り決めをおこないます。しかし、気軽な口約束の場合、このような契約を締結せずに進むことも多く、責任の所在がないためトラブルに発展しやすいのです。
参考:新・フリーランス実態調査 2021-2022年版|ランサーズ
フリーランスが報酬踏み倒しにあったときの対処法
フリーランスの報酬未払いトラブルが増加する中、実際に踏み倒し被害にあった場合は、どのように対処すべきなのでしょうか。
話し合いでの解決が望ましいですが、それが叶わなかった場合には、内容証明の送付や裁判所へ依頼するなどの手続きが必要となります。
ここでは、具体的な対処法について詳しく見ていきましょう。
報酬踏み倒しにあったらまずするべきこと
「報酬の踏み倒しかも?」と感じた場合には、まずすべきことが2つあります。
1つ目は、仕事内容の詳細や支払日を確認し、本当に未払いなのかどうかを確認することです。
まずは納品物が求められる基準を満たしているか、期日などを含め正常に納品されているかを確認します。また請求書や契約書があればその内容を、見当たらない場合はチャットなどのやり取りの履歴を確認してみましょう。
2つ目は、先方に直接リマインドや確認をおこなうことです。
企業相手であれば支払日などが決まっていますが、個人間の取引の場合はその限りではないため、単純に支払いを忘れてしまっているという可能性も考えられます。
報酬踏み倒しが確定した場合の回収方法
報酬の踏み倒しが確定した場合の回収方法について、具体的に見ていきましょう。
大切なことは、報酬未払いを明確に示す証拠を複数集めておくことです。請求書には期限があり、2020年3月以前は2年、2020年4月以降は5年が時効となっています。回収を試みる際には、その点にも注意が必要です。
参考:請求書の時効は何年?未払い・未請求の売掛債権が消滅する期限|マネーフォワード クラウド
相手方と話し合いで解決をはかる
最初にご紹介する回収方法として、まずは相手方と直接話し合いによって解決をはかる方法が挙げられます。
いきなり法的措置に進むのではなく、当事者同士の話し合いで解決しようとするのが一般的です。
話し合いをおこなう際には、チャットツールやメール、電話、直接の訪問など、コミュニケーションのとれる方法で催促をおこない、コンタクトを取りましょう。こちらの言い分をきっちりと伝えると共に、相手方の言い分を聞き、今後どのように対応するべきかを判断します。
相手方の担当者とそもそも連絡がつかないという場合には、ほかの担当者に連絡してみるか、別の方法を検討しましょう。
内容証明郵便を送る
話し合いで解決できないと判断した場合には、次の段階として「内容証明郵便」を送りましょう。
内容証明とは、文書を差し出した日付、差出人の住所と氏名、宛先の住所と氏名、そして書かれている内容を、郵便局が証明してくれるというものです。
内容証明に法的効力はないものの、こちらが相手方に対して「支払いの催促をした」という事実を証拠として残せます。これで解決しない場合には法的処置に移ることになるため、証拠の残る文書として催促する必要があるのです。
参考:内容証明|郵便局
裁判所に依頼して相手方に支払督促を送る
話し合いや内容証明の送付など、当事者同士では解決が難しいと判断した場合には、裁判所へ「支払督促」の送付を依頼しましょう。
支払督促とは、書類審査のみでおこなえる迅速な裁判手続のことであり、申立てにもとづいて簡易裁判所の裁判所書記官が金銭の支払いを求める制度です。手続きのために裁判所へ出向く必要がなく、裁判所へ収める手数料も通常の訴訟の半分で済みます。
相手方が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てをおこなわなければ、支払督促には「仮執行宣言」が発付され、強制執行の申立てをおこなえるようになるのが一般的です。
逆に、相手方が異議申立てをおこなった場合には、地方裁判所または簡易裁判所の民事訴訟手続へ移行します。
参考:「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?|政府広報オンライン
参考:支払督促|裁判所
少額訴訟・訴訟を提起する
報酬として請求する額が60万円以下の場合には、簡易裁判所に「少額訴訟」を提起するという方法もあります。
少額訴訟は、原則1回の審理でおこなう簡易的な手続きで、終了までの期間が早いことが特徴です。
即時解決を目指して簡易的におこなわれる手続きであるため、証拠書類や証人などは、審理の日にその場ですぐに調べられるものに限定されます。
訴訟の途中であっても話し合いによって解決することがあるほか、こちらの言い分が認められる場合であっても分割払や支払猶予、遅延損害金免除の判決がされることも珍しくありません。
請求する額が140万円以下の場合には、簡易裁判所へ民事訴訟の手続きを提起します。民事訴訟には訴状や証拠書類、収入印紙、郵便切手などが必要です。
上記のいずれにも該当しない場合には、地方裁判所へ訴訟を提起します。
参考:少額訴訟|裁判所
参考:民事訴訟Q&A|裁判所
最終的に回収できなかった場合は貸倒損失処理で経費計上
報酬踏み倒しに対して対応をおこなったにもかかわらず、最終的に売上を回収できないケースも残念ながらあります。
この場合には、「貸倒引当金」として経費にする方法によって、被害を軽減できます。
貸倒引当金とは、取引先の倒産などが原因で売上を回収できなくなった際の損失額(貸倒損失)をマイナス計上する引当金のことです。
貸倒引当金の勘定科目には以下の2種類があります。
- 貸倒引当金繰入(将来の貸倒れ金額を見積って計上する)
- 貸倒引当金戻入(前期に計上した貸倒引当金を取り崩すために計上する)
状況に応じて適切に計上しましょう。
参考:決算・申告、業務の流れ(法人) 売掛金が回収できそうにありません。何か仕訳が必要ですか?|弥生株式会社
フリーランス個人で対応できない場合は弁護士に相談
フリーランスとしてさまざまな業務をこなしていれば、個人として対応が難しいケースに遭遇することもあります。
そのような場合は泣き寝入りせず、弁護士へ相談しましょう。
昨今はフリーランスが働きやすい環境が整備されつつあり、弁護士へアクセスするためのさまざまな方法が用意されています。
フリーランス・トラブル110番を利用して弁護士に相談する
1つ目にご紹介するのは、「フリーランス・トラブル110番」を利用して弁護士に相談する方法です。
フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省から委託を受けている第二東京弁護士会が運営しているワンストップサポートサービスです。
あいまいな契約や口頭でのやり取り、ハラスメント、報酬の未払いや減額などのトラブルが発生した際に、無料かつ匿名で相談できます。訴訟や調停、和解あっせんなどの手続きをサポートしてくれます。
フリーランス・トラブル110番を利用する場合には、まず電話やメール、あるいは対面面談やWeb(ビデオ通話)で弁護士に相談をおこなうのが一般的です。トラブルを解決したいなら、適切と考えられる機関を紹介してもらえます。
参考:フリーランス・トラブル110番|厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会
任意の弁護士に相談する
2つ目の方法は、任意の弁護士に相談するというものです。
知り合いや過去のつながりの中に弁護士がいる場合は、思い切って相談してみましょう。
近年は弁護士の数が年々増加しているため、自分の知り合いには弁護士がいなくても、友人や知人の知り合いの中から見つけられるかもしれません。
初回の法律相談が無料という弁護士も多いので、ネットの口コミなどを参考にし、最寄りの法律事務所で相談してみるというのも1つの方法です。法律事務所にも選択肢が多いので、さまざまなところを比較検討して探すとよいでしょう。
法テラスを利用して弁護士に相談する
どこに相談してよいかわからないという場合には、「法テラス(日本司法支援センター)」に相談するという方法もあります。
法テラスとは、法務省が所管する法的トラブル解決のための総合案内所です。利用者からの問合せ内容に応じて、相談機関・団体等(弁護士会、司法書士会、地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を無料で提供してくれます。
収入に関する一定の条件を満たしていれば、法律相談を無料で受けられます。とくに、相談費用を抑えたい場合には、全国の法テラスを活用するのがおすすめです。
弁護士費用保険「フリーガル」を活用して弁護士に相談する
4つ目の方法は、弁護士費用保険「フリーガル」を活用するというものです。
弁護士費用保険「フリーガル」とは報酬トラブル弁護士費用保険であり、フリーランス協会の一般会員であれば誰でも加入できます。
フリーガルに加入していれば、弁護士に無料で法律相談ができるだけでなく、日本全国から近くの弁護士を紹介してもらうことも可能です。そのほか、相談料、着手金、報酬金、手数料、訴訟費用などの弁護士費用のサポートも受けられます。
なお、2022年9月15日以降は、年間保険料が0円、自己負担額も0円で、保険金額が70万円分自動付帯されるよう改定されました。
参考:自己負担額0円で弁護士を味方に!報酬トラブル弁護士保険「フリーガル」がパワーアップ|フリーランス協会
フリーランスが報酬踏み倒しを未然に防ぐ方法
最後に、フリーランスが報酬踏み倒しトラブルを未然に防ぐための対策方法についてご紹介します。
繰り返しになりますが、報酬の踏み倒しは、すべてのフリーランスに起こる可能性があるものです。そのため、自衛策として、取引をおこなうクライアント(相手)をしっかりと選ぶこと、取引前に確実に契約を交わすこと、重要なやりとりは記録すること、などを心がけておきましょう。
フリーランスエージェントを利用して信頼できるクライアントを選ぶ
報酬踏み倒しを未然に防ぐ1つ目の方法は、フリーランスエージェントを利用して信頼できるクライアントを選ぶことです。
エージェント経由で契約するクライアントであれば、一定以上の質が担保された信頼できるところと判断できるため、報酬踏み倒しのリスクを軽減できます。
Relanceは、フリーランスエンジニア専門のエージェントサービスです。エンジニア目線で厳選した案件のみを提供しており、ご希望に沿った高単価・長期稼働案件をご紹介しています。
フリーランスの働き方もサポートしており、法律相談やトラブル補償といったサービスも受けられます。万が一報酬踏み倒しなどのトラブルが発生した場合も、Relanceであれば安心してサポートを受けられるでしょう。
参考:Relance
仮払い後に業務を開始できるクラウドソーシングを利用する
2つ目の方法は、仮払い後に業務を開始できるクラウドソーシングを利用することです。
業務開始前に仮払いがおこなわれることにより、業務完了後の報酬踏み倒しに遭遇する可能性は低くなります。
クラウドソーシングサービスの仮払い・前払いシステムとして挙げられるのは、以下のようなものです。
たとえばクラウドワークスの場合、契約の締結後に報酬金額をクラウドワークスへ預ける「仮払い」の手続きがおこなわれます。仮払いの時点では報酬が支払われず、「固定報酬制」の案件は検収完了の時点、「時間単価制」の案件は報酬額が確定した時点で支払いがおこなわれる仕組みです。
契約前に契約書の内容をよく確認する
報酬踏み倒しを未然に防ぐ3つ目の方法は、契約前に契約書の内容をよく確認することです。
フリーランスとして安全に働き続けるためには、どのようなクライアントとの取引であっても、事前に契約書を交わすようにしましょう。契約内容としてあいまいな表現はないか確認すると共に、契約内容を明確化しておくことが大切です。
契約書で確認すべき項目としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- 業務内容と契約形態
- 契約期間
- 契約の更新・解除方法
- 再委託の可否
- 報酬や経費の支払い条件
- 著作権・知的財産権についての規定
- 秘密保持に関する規定
- トラブルの際の損害賠償についての規定
契約内容に不安がある場合には、締結前に一度弁護士へ相談してみるのも1つの方法です。
仕事上で発生した重要なやりとりを記録する
4つ目の方法として、仕事上で発生した重要なやりとりを記録する方法が挙げられます。
業務の中で重要と思われるやり取りがあれば、チャットツールやメールでのやりとりであっても、日常的に記録しておきましょう。
とくに契約内容に関しての変更や修正があった場合には、後々トラブルに発展する可能性があります。このため、トラブルの元となりそうなやり取りはしっかりと記録しておき、万が一訴訟などに発展した場合の証拠として保全しておくことが大切です。
締日・支払日を確認した上で請求書を確実に発行する
報酬踏み倒しを未然に防ぐ5つ目の方法として、締日や支払日を確認した上で、請求書を確実に発行することが挙げられます。
報酬の未払いは、こちら側の勘違いなどが原因で起こる場合もあります。このため、フリーランス側も落ち度がないよう心がけ、入念にチェックをおこないましょう。
締め日にさまざまな業務が重なって慌ててしまうことがありますが、金額や締め日、支払日などに誤りがないかを、冷静にかつ客観的に確認することが大切です。
フリーナンス即日支払いを利用する
最後にご紹介するのは、「フリーナンス即日支払い」を利用する方法です。
フリーナンス即日支払いは、フリーランスや個人事業主の請求書を買い取り、即日入金してくれるサービスです。損害賠償保険や所得補償保険、バーチャルオフィスなどのサービスが揃っており、これによって報酬踏み倒し対策にもなります。
フリーナンス即日支払いを利用する場合、取引先企業の支払遅延が起きた際には、まずフリーナンスから申込者へ連絡が入り、問題が解決しない場合には取引先へ連絡が行く仕組みとなっています。
これによってフリーナンス・ユーザー側の与信スコアは下がらないようになっているので、安心です。
参考:即日払いの取引先が支払期日までに支払わなかった場合はどうなりますか?(よくある質問)|フリーナンス
まとめ
報酬踏み倒しは、フリーランスとして働く人なら誰にでも起こり得ます。もし報酬踏み倒しトラブルに遭遇した場合には、この記事にある方法で解決を試みましょう。請求書の回収には期限があるため、注意が必要です。
わからないことや困ったことがある場合には1人で抱え込まず、フリーランス・トラブル110番や法テラス、専門家などに相談しましょう。いずれの場合であっても、早めに解決する方法を模索することをおすすめします。
報酬踏み倒しを予防するために、日常業務において対策を取っておくことも大切です。
どのように準備しておけばトラブルに巻き込まれにくいかをしっかりと考え、フリーランスとして安心して働き続けられる体制を整えましょう。
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